『なんちゃって家族』(R15だけど)爽快で温かな余韻が残る、爆笑アメリカン・コメディ

 批評家たちの冷たい視線をモノともせず、全米でR指定史上に残るヒットを記録したというアメリカン・コメディがついに上陸。家族を装ったおバカな4人が繰り広げる珍道中に、(東京の)マスコミ試写室は何度も笑いに包まれた。下ネタで女性を笑わせるのは、実際のところ、男性が思っている以上に難しいと思うが、本作は4人の掛け合いのテンポがよく、スカッと突き抜けた明るさもあって、私自身「女なのにこんなに笑っていいのか」というぐらい爆笑してしまった。昨年ヒットした『テッド』のシュールな笑いでもなく、『ハングオーバー!』のようなハメ外し系の笑いとも違う。昔のコメディ映画を思わせる分かりやすいアプローチと、キャラクターの魅力を生かした演出を堪能できる映画だ。

 ドラッグを売って生計を立てていたデヴィット(ジェイソン・サダイキス)は、ある日チンピラに絡まれてブツもカネも失ってしまう。そのため、メキシコから2トンのマリファナを運ぶという大仕事を引き受けざるを得なくなる。怪しまれないように運ぶため、彼は“家族旅行を装ってキャンピングカーで運ぶ”という名(妙)案を思いつくのだが、彼が旅のお伴に選んだのは・・・場末のストリッパー(ジェニファー・アニストン)、万引き常習のホームレス娘(エマ・ロバーツ)、そして近所の童貞少年(ウィル・ポールター)というメンツ。友達も恋人もいない彼らは、「とにかくカネ(or命)が欲しい」という目的でメキシコを目指す。陽の当たらない場所で別々に生きてきた彼らが、いきなり翌日から休暇を楽しむ仲良し家族、ミラー家を演じきることができるのだろうか。

この手の映画では道中の出会いにスリルや笑いがつきものだが、ミラー家の旅も例外ではない。同じようにキャンピングカーで旅をするフレンドリーな家族と、ワケあって一夜を共に過ごすという展開になるのだが、気が緩んできたところで“本性まる出し”なんてことも。とくに家族対抗ゲームのシーンで、我を忘れて珍回答を連発するジェニファー・アニストンに場内は大ウケ。女性にとっても、同性の下ネタというのは比較的受け入れ易いのかもしれない。ブラピの元妻だし本来のイメージとかけ離れているのもツボだが、他のシーンでもドヤ顔でストリップを披露するなど、どこか開き直ったような清々しさがあり、44歳の体当たり演技にコメディエンヌのセンスが感じられる。
そして、もう一人、語らなくてはならないキャラが登場する。童貞少年役のウィル・ポールターだ。『リトル・ランボーズ』で映画デビューを飾り、期待を寄せられている若手俳優であるが、他の誰にもない雰囲気を持ち、画面に出ているだけで面白いからタダモノではない。本作のキャラクターは“密輸とかにぜったい連れて行ってはいけないKY”だが、その場違いな空気感と初々しさが作品にもたらすインパクトは絶大。今後、他の映画でどんな表情をみせるのか、とても楽しみである。

一番手前がウィル・ポールター

物語の展開はあり得ないハプニングの連続だけど、愉快な登場人物といきいきとした演出によって、勢いがある痛快な作品に仕上がっている。笑いだけではない、温かな余韻も残る(疑似)家族コメディだ。

2014年1月25日 シネマート新宿ほか全国ロードショー!

作品データ
原題:WE’RE THE MILLERS
監督:ローソン・マーシャル・サーバー
出演:ジェニファー・アニストン、ジェイソン・サダイキス、エマ・ロバーツ、ウィル・ポールター、ニック・オファーマンほか
製作:2013年/アメリカ/109分/R15
配給:ワーナー・ブラザーズ映画
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/werethemillers/#home
©2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC

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