【TIFF】トム・アット・ザ・ファーム(ワールド・フォーカス)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

※2014年10月25日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンク他 全国順次ロードショー

監督:グザヴィエ・ドラン
出演:グザヴィエ・ドラン、ピエール=イヴ・カルディナル、リズ・ロワ、エヴリーヌ・ブロシュ

作品解説(公式サイトより)
亡き友人の実家の農場を訪れたトムは、彼を歓迎しない友人の兄によって危険な状態に追い込まれ、事態は思わぬ方向へ進んでいく…。

主演を兼ねるグザヴィエ・ドラン監督は、20歳で撮った初長編『マイ・マザー』(09)がカンヌ映画祭で話題を呼び、続く『胸騒ぎの恋人』(10)、そして日本でも先般公開されて絶賛を博した『わたしはロランス』(12)がいずれもカンヌに出品されるという若き天才ぶりを発揮している監督である。最新作となる本作は初のスリラーであるが、キャラクターを丁寧に描いて巧みなストーリーテリングを展開し、ドランの世界を維持したまま堂々たる心理サスペンスを完成させた。本年のヴェネチア映画祭コンペティション部門に出品され、国際批評家連盟賞を受賞している。


クロスレビュー

閉鎖的な田舎町に突如やってきた部外者、複雑な家族感情、誰もが口をつむぐ過去の事件、血と地のしがらみ。これはまさしく横溝正史ワールドだ。亡き友の葬儀のために友人の実家を訪ねたトム。友人の兄から嫌がらせを受けながらも、彼がそこにとどまる理由とは? 愛と裏切り、暴力と融和を経て変化していく心情、浮かび上がる過去と「ここにはいない人間」の輪郭の描き方が見事。そして、主演を務めたグザヴィエ・ドラン監督が美しすぎる! 金髪の巻き毛をなびかせる彼はまるでレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた天使のよう。天は二物も三物も与えるものだ。まだ24歳、末恐ろしい。
(外山香織/★★★★★)

手持ちカメラの不安定な揺れ。登場人物たちのアップが多く、彼らの表情や目の色に、台詞では説明されないあれこれを想像させられる。呆れるほど広大な田舎の田園風景に、のどかさはない。命が生まれては消えて行く牛小屋、枯れた葉がナイフのように尖ったトウモロコシ畑…農場を覆う閉塞感に息が詰まりそうだった。“顔に傷のある男”の、恐怖アイテムとしての使い方が圧巻。クローゼット・ゲイの痛みが共鳴し、トムが暴力的なフランシスに惹かれていくさまが恐ろしかったけれど、トムを演じたグザヴィエ・ドラン監督の才能は、もっと恐ろしい。
(北青山レオ/★★★★★)

画面から伝わってくる緊張感といい、心の奥に潜む人間の弱さの描き方といい、今作もドラン監督の才気がほとばしる。『わたしはロランス』や『マイ・マザー』とは異なるアプローチだけど、作品に通底して描かれているのは“同性愛”と“母親との関係”である。監督自身が抱えているテーマなのだろうか。母親への歪んだ愛が狂気となり、他人を傷つけるフランシス。そんな彼に恐怖を感じながらも、なかなか離れられないトム。両者の間に生まれる奇妙な関係性から目が離せない。
(鈴木こより/★★★★☆)


Photo by Clara Palardy ©2013 – 8290849 Canada INC. (une filiale de MIFILIFIMS Inc.) MK2 FILMS / ARTE France Cinéma
95分 フランス語 Color | 2013年 カナダ=フランス |

上映情報
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen2
10/20 11:55 – (本編95分)

▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen1
10/24 14:10 – (本編95分)