【TIFF】魂を治す男(ワールド・フォーカス)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

監督:フランソワ・デュペイロン
出演:グレゴリー・ガドゥボワ、セリーヌ・サレット、ジャン=ピエール・ダルッサン、マリー・パイエン、フィリップ・ルボ

作品解説(公式サイトより)
死んだ母親の特殊な能力を受け継いでいると言われるフレディ。しかしトレーラー暮らしで人生に対する不安と虚無感を抱えたフレディはそれどころではない。人を治癒する力は、自らの魂も救うであろうか…?

『がんばればいいこともある』(08/TIFF08最優秀女優賞受賞作)以来5年振りのオリジナル作品となる名匠フランソワ・デュペイロン監督が、社会の底辺で生きる人々の魂の行方を、明るい光線の下で極めて繊細に美しく描く。主演のグレゴリー・ガドゥボワは、2012年にセザール賞の「最も期待される若手俳優賞」を受賞しているが、大きな身体に複雑な内面を抱えた男性を見事に演じ、仏のトップ俳優の仲間入りが確実視される出色の出来である。サンセバスチャン国際映画祭コンペティション部門出品作。


クロスレビュー

病に苦しむ人を癒す能力を持つ男。話を聞きつけて男の元にやって来る人々、母から受け継いだ特異な能力、大工の父親、処女懐胎のジョークなど、なんか「イエス・キリスト」を連想。でも、本人はそんな「神のごとき」力は望んでないし、自分の真に望むものは手に入らず結構散々。人を救えても自分自身は救済されない。それでも、自分の小さな幸せを追い求めて生きようとするデブい主人公が最後にはチャーミングに見えてくる。何気にビールが飲みたくなる作品。
(外山香織/★★★☆☆)

母親からヒーリングの能力を受け継いだ40歳、中年、太り気味の男の話と言いながら、実際には、彼が手を当てて明らかに治癒した人は、1人だけである。確かに何かから逃げ出したいと彼が見る悪夢の中に予知夢が入っているので、特殊な能力があることは確かではある。しかし、それよりも彼の能力を信じて集まってきたさまざまな人々、悲しみや悩み不安を抱えた人々を、彼を媒介として描くことに主眼が置かれている。いわばこれは、現代人の悩みのオン・パレード。病気を治癒するというよりは、彼に心を開いた人が、彼に思いをぶちまけることによって、心が癒されるという点で、邦題『魂を治す男』は的を得ている。
(藤澤貞彦/★★★★☆)


© Alfama Films – Kinology
124分 フランス語 Color, Black & White | 2013年 フランス |

上映情報
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen2
10/18 20:55 – (本編124分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: フランソワ・デュペイロン(監督/脚本)

▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen7
10/21 12:15 – (本編124分)


第26回東京国際映画祭
期間:2013年10月17日(木)〜10月25日(金)9日間
場所:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/tiff/outline.php