【TIFF】祈りの雨(アジアの未来)
監督:ラヴィ・クマール
出演:マーティン・シーン、ミーシャ・バートン、カル・ペン、ラージパール・ヤーダウ、タニシュター・チャタルジー
作品解説(公式サイトより)
インド中央部のボパール市で1984年に起こった化学工場事故を描いた実話ドラマ。インド俳優陣にマーティン・シーンらが加わり、化学物質の流出で甚大な被害をもたらした大事故のプロセスを克明に再現している。
1984年12月2日から3日にかけての深夜、インド中部のボパール市にあるアメリカ企業ユニオン・カーバイド社の殺虫剤工場からイソシアン酸メチルの猛毒ガスが漏れ出し、ひと晩で1万人とも言われる多数の死者が出る甚大な被害となった。本作はこの「ボパール化学工場事故」を基にしたドラマである。リキシャ(三輪車タクシー)の運転手ディリープの目を通して、外資系企業に依存する町の状況と、大惨事に至るプロセスが克明に描かれている。マーティン・シーンが企業の最高経営責任者アンダーソンを演じている。ボパール生まれのクマール監督は「若い世代に観てもらいたい。世界のどこかで別の“ボパール”が起きているかもしれないから」と語っている。
クロスレビュー
スクリーンの中で起きることのひとつひとつが、今の日本にとっての「我がこと」すぎて言葉を失った。人が私利私欲だけに生きれば世界は簡単に壊れてしまう。大惨事の夜、善良なスラムの人たちの生活が片っ端から奪われていく場面はあまりにも惨い。彼らのような、知ることを許されずに亡くなっていった多くの人たちのためにも、情報社会に生まれた私たちはもっともっと知る努力をしていかなければいけない。主人公の息子が虫と戯れる場面を2度描いたクマール監督は、彼の無邪気な笑顔に、哀しみと希望の両方を託したのではないかと感じた。
(北青山レオ/★★★★★)
「事故の記憶を忘れないことが、未来に間違いを起こさないことに繋がる」という監督の言葉。しかし日本では、すでに福島の事故が起こってしまっている。この作品で警告されていること、すべてが当てはまることに驚愕する。上層部の発言、人件費の削減、企業に癒着する政治家、デマ呼ばわりされる記者、繰り返される「安全」という言葉、小さな事故の隠ぺい、仕事欲しさに危険に目をつむる住民たち。それぞれの立場の人たちを客観的に描いているのがいい。情緒性もありながらジャーナリスティックであり、科学的でもある。本業は医師という監督だからこそ逆にここまで達成できたのか。強く一般公開を望む。
(藤澤貞彦/★★★★★)
30年前にインドで起きた大惨事が、日本をはじめ世界で繰り返されている。管理者の無知と安全対策の欠如、事実隠蔽によって起こった“人災”である。ただ、この物語は事故責任の追求ではなく、真実を知ること、伝えることの重要性を語りかける。本業は小児科医というクマール監督、何が人の心を動かすのかを熟知しているという印象を受けた。初の長編作となるが、脚本に共感したというマーティン・シーンらハリウッド俳優も出演し、作品に華を添えている。
(鈴木こより/★★★★★)
© Rising Star Entertainment, Sahara Motion Pictures
103分 英語、ヒンディー語 Color | 2013年 インド=イギリス |
上映情報
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen5
10/18 16:35 – (本編103分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: ラヴィ・クマール(監督)
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen5
10/20 14:00 – (本編103分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: ラヴィ・クマール(監督)
第26回東京国際映画祭
期間:2013年10月17日(木)〜10月25日(金)9日間
場所:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用