【TIFF】ウィ・アー・ザ・ベスト!(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

監督:ルーカス・ムーディソン
出演:ミーラ・バルクハンマル、ミーラ・グロシーン、リーヴ・ルモイン

作品解説(公式サイトより)
家の問題とかいろいろあるけど、とにかく音を鳴らせ! 80年代初頭を舞台に、思春期の衝動に駆られてパンクバンドを始める女子中学生の弾けるような日々を、青春映画に定評のあるスウェーデンの名監督が甘く切なく痛快に映画化!

デビュー長編『ショー・ミー・ラヴ』で孤独なティーンの少女の心境を細やかに描き、一躍スウェーデン期待の監督として世界に出たルーカス・ムーディソン監督が、15年振りに原点回帰を果たしたかのように思春期の少女の複雑な胸の内を弾けるタッチで描いた本作は、監督の妻ココによるマンガを原作としている。ココの自伝的要素も含むが、82年という時代設定はムーディソン監督の思春期とも重なる上に、子どもと大人の関係、他の場所への憧れ、そして孤独や高揚感といった監督特有のテーマを多く含む内容となった。自らの作品を貫くテーマについて監督は言う:「悲劇的なことが起こった後には、良いことが起こる。本当かどうか分からないけれど。そうであればいいと願っています」。


クロスレビュー

13歳のパンク少女3人が明るく楽しく音楽の道を突き進む…という部活的な爽やかな展開を予想していたが、それとは少し違った。無邪気と図々しさは紙一重だったり、善意の押しつけだったり、自分に非があるのに謝らなかったり、と“私達は最高!”とばかりに世界が自分中心に回っているかのような思春期特有の傲慢さを不快に感じるシーンも。だがその一方で、かつて少女だった人(筆者含む)にとっては、その多感な時代を程度の差こそあれ経験しているゆえに懐かしさも覚え、苦笑しながらもついつい彼女達を応援してしまう。粗暴さと優しさを内包した少女3人がそれぞれ好演。
(富田優子/★★☆☆☆)

子供が主人公の作品で、親の顔が見えてこないものが多い中、それぞれの家の風景、家庭の事情までもがはっきり見えてくるのは、さすがルーカス・ムーディソン監督と言える。仲間はずれにされても、どこ吹く風で、我を張る少女たち。しかし、彼女たちのその姿は、自分たちが演奏する音楽と同じで、不器用で、いつも不協和音を奏でている。反権力、弱い者の味方と粋がっていても、楽器を買うのに、物乞いをしたり、そのお金で甘いものを買ってしまったりといった矛盾した行動が少女らしい。彼女たちの行動が、パワフルなエネルギーに溢れていて、時に鬱陶しいと感じるのは、こちらが年を取り過ぎたからなのだろうか。
(藤澤貞彦/★★★☆☆)

楽器も弾けないのに勢いでバンドを始め、気に入らない体育の授業をネタに反体制を謳う。13歳なりの立派なパンク・スピリットで、ヘアスタイル、スカーフの巻き方、安全ピンの留め方、シャツの着こなしも魅力的。思春期特有の傲慢さで羽目をはずす少女たちの行動はとても褒められたものではないけれど、それぞれに悩ましい家庭環境、コンプレックス、将来への不安と戦いながらの自己表現なのだと思うと、応援したくなってくる。2人ではうまくいかないことも、3人揃えばなんとかなるもの。ボボ、クラーラ、ヘドウィグのバランスが微笑ましい。
(北青山レオ/★★★☆☆)

冒頭、少女が作り出す歌詞のなかに「原発NO!」というフレーズがあったりして、「スウェーデンの13歳の主張をもっと聴かせて」と前のめりになる。だけど彼女たちにとってパンクはあくまでファッション、もしくは通過儀礼。すべては思いつきだし、欲望にまかせて行動してるだけ。良くも悪くも、13歳のリアルがここにある(中二病って世界共通なのね)。ただ、メンバーの中にクリスチャンの少女をスカウトしてから、状況は少しずつ前に動き始める。パンクバンドを救うのがクリスチャンという設定は意外性があって面白い。
(鈴木こより/★★★☆☆)


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102分 スウェーデン語 Color | 2013年 スウェーデン |

上映情報
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen7
10/23 18:10 – (本編102分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: ルーカス・ムーディソン(監督/脚本)、ココ・ムーディソン(原作)

▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen5
10/24 13:35 – (本編102分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: ルーカス・ムーディソン(監督/脚本)、ココ・ムーディソン(原作)


第26回東京国際映画祭
期間:2013年10月17日(木)〜10月25日(金)9日間
場所:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/tiff/outline.php