【TIFF】馬々と人間たち(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

2014年11月上旬より、シアター・イメージ フォーラムほか全国で順次公開

監督:ベネディクト・エルリングソン
出演:イングヴァル・E・シグルズソン、シャーロッテ・ボーヴィング、ステイン・アルマン・マグノソン、ヘルギ・ビョルンソン

作品解説(公式サイトより)
アイスランドの荒涼たる大地。人々にとって馬は単なる動物を超えた存在であった。馬と人間の欲望と生と死を、奇想天外なエピソードの連続で語る未曾有の「人馬ドラマ」。斬新なセンスが溢れる俳優出身監督のデビュー長編。

アイスランドには、アイスランド馬と呼ばれる独自の種が存在しており、荒天や噴火などの厳しい自然環境を生き延びてきた馬に対し、人々は並々ならぬ共感を寄せているという。本作は、単なる動物と人間という関係を超えた馬と人との強固な結びつきを、奇想天外なエピソードの連続で語るものである。死へのブラックユーモア、性欲、そして生の象徴のごとく躍動するギャロップの美しさなど、驚きに溢れた作品を手掛けたベネディクト・エルリングソン監督は本作が初長編。ラース・フォン・トリアー監督“The Boss of it All”(06)など、俳優として多くの北欧作品に出演している。もちろん、監督本人も熱心な馬好きである。


クロスレビュー

「どうやって撮ったの?」と思わせるユニークで斬新な映像詩に引き込まれた。厳しい自然環境で共存する馬と人間が、北欧映画らしい風刺的なユーモア満載で描かれる。馬への接し方から、人間の言動の矛盾や滑稽さが浮かび上がってくるのが面白い。“ケジメ”と言って馬を“お仕置き”しておきながら、人間たちは何やってるんだか(笑)。馬の演出に圧倒されるという点でアルベール・ラモリス監督の名作『白い馬』を想起したが、本作の馬は飼い主に似て表情がユーモラスなのが可笑しかった。
(鈴木こより/★★★★☆)

何か言いたげな馬の目のアップが章の扉となって複数の小話が展開する。前章の物語の続きが、次章の途中で別の人物の視点に引き継がれた形で完結するという、独特の話術にぐいぐい引き込まれていく。馬の姿が神々しいまでに美しい。馬と人との物語というだけで、その性と死、悲しみや喜び、或いは私欲、プライド、嫉妬心、人の愚かさまでが喜劇タッチで描かれる。さらには、雄大な自然の美しさとそれに伴う厳しさもしっかりと示されて、これはアイスランドに生きる人と馬、その人生、大地への賛歌とも言える作品になっている。
(藤澤貞彦/★★★★★)


81分 アイスランド語 Color | 2013年 アイスランド |

上映情報
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen7
10/21 18:25 – (本編81分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: ベネディクト・エルリングソン(監督/脚本)、フリズリク・ソール・フリズリクソン(プロデューサー)

▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen6
10/22 15:05 – (本編81分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: ベネディクト・エルリングソン(監督/脚本)、フリズリク・ソール・フリズリクソン(プロデューサー)


第26回東京国際映画祭
期間:2013年10月17日(木)〜10月25日(金)9日間
場所:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/tiff/outline.php