【TIFF】ザ・ダブル/分身(コンペティション)
※『嗤う分身』のタイトルで、2014年11月8日(土)より渋谷・シネマライズほか全国ロードショー
監督:リチャード・アヨエイド
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン、ノア・テイラー
作品解説(公式サイトより)
俺と全く同じ外見の男が入社した。そいつは俺の成果をすべて奪っていく! 文豪ドストエフスキーの原作を近未来的設定に置き換えた、シュールで哲学的な新感覚スリラー。『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグ主演。
長編監督デビュー作『サブマリン』(10/TIFF11出品作)で構築したユニークな世界観で映画作家としての名声を一躍、確立したリチャード・アヨエイドは、ドストエフスキーの『二重人格』の脚色に取り組んでいたアヴィ・コリン(ハーモニー・コリンの弟)の企画に参加し、近未来的な背景を持つ孤独と劣等感を軸にしたラブストーリーを書き上げた。監督は本作のトーンにインスパイアを与えた作品にゴダールの『アルファヴィル』、リンチの『イレイザー・ヘッド』、ウェルズの『審判』、フェリーニの『悪魔の首飾り』などを挙げ、カウリスマキのユーモアセンスへも好意を表すが、これらの影響を見事に消化し、自身がコメディアンでもあるアヨエイドの極めて特異な個性がいかんなく発揮されている。
クロスレビュー
バカバカしいほど大きくて複雑なシステムのコピー機、コンピュータなどが活躍するレトロ未来都市が舞台。音楽も「上を向いて歩こう」「ブルーシャトウ」と60年代ジャポニズム。英国の人はやっぱり『未来世紀ブラジル』『1984』の世界が好きなのだ。真っ暗なロンドン地下鉄から始まり、終始暗いイメージでお話が進行するのは、夢と現実の狭間、精神世界を描いているから。ただここまで凝りまくったあげく、中心となる話が恋愛というのは、ちょっと寂しい気も。会社のボス主催のパーティー会場の音楽センス、雰囲気がほとんどカウリスマキの世界というのが妙に嬉しい。
(藤澤貞彦/★★★☆☆)
サエないジェシーとイケてるジェシーの2パターンを一度に見ることができるので、彼のファンは必見の作品だ(個人的にサエないジェシーが萌えポイントでハマリ役だと思う)。近未来のようでいて携帯電話やインターネットは登場せず、連絡は固定電話でのみ。おまけに「上を向いて歩こう」や「ブルーシャドー」など日本の歌謡曲が大音量で流れ、レトロで国籍不明な世界が形成されていた。自分と瓜二つの風貌だが性格は真逆の男に人生を乗っ取られる恐怖と抵抗を描き、スリリングな展開にワクワクするものの、不条理さや前述の不思議な世界観もカフカの小説や『ブレードランナー』などを想起させ、格別の新鮮さは感じられず。
(富田優子/★★★☆☆)
誰しも「パーマン」みたいに簡単に自分の分身ができれば便利なのにって思うことあるんじゃないだろうか。でもそれが全くの別人格だったら? 冴えない主人公は心の何処かで違う自分になりたいと思っていたのだろうか。会社の人間が後発の「彼」を簡単に受け入れてしまうのが滑稽だが、結局のところ、主人公は好きな子さえ自分を選んでくれたら満足なのかもしれない。一方、IDカードを紛失してしまえば誰が自分を証明してくれる?っていう恐怖感は今の現代人ならどこかにあるだろう。希薄な人間関係にうわべだけ取り繕う顔。他人事とは思えない薄気味悪さが残る作品。
(外山香織/★★☆☆☆)
これ以上ないほどダサいフォルムのスーツを、これ以上ないほどダサく身にまとうサイモンに、次から次へと不運が降りかかる。奇妙な世界観の中では「上を向いて歩こう」や「ブルー・シャトウ」がすごくキッチュな歌に聴こえてくるから不思議だ。自分そっくりな顔を持つ男の登場でさらに追い込まれていくサイモンの孤独感がすさまじく、悪夢のような展開は、彼の目に映る心象風景なのではないかとも思えた。他者との関わりの中で“自分はここにいる”と自覚できなければ、人は生きていけない。心優しい「キモ男」を応援しながら観ていたから、ラストに微かな救いがありホッとした。
(北青山レオ/★★★★☆)
“Jesse Eisenberg” Photo by Dean Rogers © Channel Four Television Corporation, The British Film Institute, Alcove Double Limited 2013
93分 英語 Color | 2013年 イギリス |
上映情報
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen5
10/18 10:40 – (本編93分)
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen7
10/19 21:10 – (本編93分)
第26回東京国際映画祭
期間:2013年10月17日(木)〜10月25日(金)9日間
場所:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/tiff/outline.php