【TIFF】捨てがたき人々(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

2014年6月7日(土)に劇場公開決定!

監督:榊 英雄
出演:大森南朋、三輪ひとみ、美保 純、内田 慈、滝藤賢一、伊藤洋三郎、田口トモロヲ

作品解説(公式サイトより)
「人は夢や希望だの言うが、心の底で考えてることは金と食べ物とセックスのことだけだっ!」この世に誕生し生きている事に苦悩しながら“愛”と“幸せ”の形を見つけ出そうともがく人間の本質を描いたドラマ。

金も仕事もなく容姿も良くない男は、生きる意味すら見出せないでいた。残されているのは空腹を満たすための食欲と男として生きているだけの証、性欲。ひとりの女と出会った事で性欲と食欲だけが程よく満たされていくが…。思いつきと、行き当たりばったりの人生から、男は、はたしてどんな“幸せ”を知ることができるのか? 本作は、この世に誕生し生きている事に苦悩しながら“愛”と“幸せ”の形を見つけ出そうともがく人間の本質を描いたドラマである。原作は、人間の本質を欲望という視点で露悪的なまでに描き社会現象となる漫画を描いてきたジョージ秋山。監督は、俳優としても活躍しながら、本作が5本目となる榊英雄。主演は、大森南朋。


クロスレビュー

『R100』でもいじられていた大森南朋が、またしてもいじられまくっていて、緊張感のある場面でも思わず笑ってしまった(『ハゲタカ』での硬派な鷲津さんや「龍馬伝」武市先生の凄味はいずこへ・・・)。セックス中心に人生が回っている大森と、その餌食となる三輪ひとみの体を張ったセックスシーンは、近頃の日本映画は“人間の業”(特に下半身系)の描写が中途半端だと感じていた筆者にとっては、この野心的な作品の登場に溜飲を下げる思いがした。主演2人以外にも肉弾戦を披露した俳優陣の力演も光る(特に美保純の存在感は出色!)。ただ終盤、10年後の描き方にそれまでの勢いが削がれた感があり、少し残念。
(富田優子/★★★★☆)

生きることに飽きて、人生を終わらせようとしていた主人公が、生まれ育った海辺の町でふたたび息を吹き返す。海のシーンで始まるオープニングが象徴的だ。一夜にして噂が広がってしまうような田舎町で、人々はくっ付いたり別れたりを繰り返しながら生きている。主人公を救う女性は、聖母なのか、悪女なのか? (胸焼けしそうなほどの)セックスシーンの中で、出産と絶頂のショットが交錯する場面には唸らされた。外面だけでは取り繕えない人間関係の、心と身体のぶつかり合いが狂気に満ちた映像で描かれる。“所詮、人間なんだ”という視点の中に、絶望と希望が見えた。
(鈴木こより/★★★☆☆)

クズい男の役がなんて似合うんだろうか大森南朋。人生に飽きたという理由で島にやって来た男が、望まずして「人並みの幸せ」を手にしてしまうことによる混乱。彼にとって生きることは食欲と性欲を満たすこと、ただそれだけだった。なのに最後には愛を求めてすがりついてしまう。一人で生きてきた男がそれでは済まなくなっていく、それもまた人生だ。全編を通して貫かれているのは人々の飽くなき性への欲望。人間っていうのはホントにどうしようもない生き物だなと思ってしまうが、それをタブーとせずに真正面から捉えようという潔さがこの映画にはある。
(外山香織/★★★☆☆)


©2012「捨てがたき人々」製作委員会
123分 日本語 Color | 2013年 日本 | 配給:アークエンタテインメント株式会社

上映情報
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen7
10/20 13:35 – (本編123分)
登壇ゲスト(予定):舞台挨拶: 榊英雄(監督)、三輪ひとみ(女優)、美保純(女優)/ Q&A: 榊英雄(監督)

▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen6
10/23 11:00 – (本編123分)
登壇ゲスト(予定): 舞台挨拶: 榊英雄(監督)/Q&A: 榊英雄(監督)


第26回東京国際映画祭
期間:2013年10月17日(木)〜10月25日(金)9日間
場所:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/tiff/outline.php