【LBFF】第10回ラテンビート映画祭:オープニング
笑いと熱気に包まれ陽気に開幕!
2013年10月12日(土)
オープニング作品『アイム・ソー・エキサイテッド!』は、昨今のペドロ・アルモドバル監督の世界についていけなかった人でもOKな群像コメディだ。アルベルト氏の言葉を借りれば、オカマ映画。その言葉どおり着陸できない飛行機に閉じ込められたひと癖もふた癖もある人たちの中心は、3人のオネエ乗務員(その一人にハビエル・カマラ)だ。他のメンバーもSMの女王(セシリア・ロス)、予知能力を持つアラフォーの女(ロラ・ドゥエニャス)、女性とのトラブルを抱えた人気俳優(ギレルモ・トレド)などなどおかしな人たちである。このメンツとなれば、珍妙なトラブルが起きないはずがない。そして飛行機の外では、アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルスがゲスト出演(実はとても重要な役)し、またブランカ・スアレスがキュートな魅力をふりまいている。久しぶりに『神経衰弱ギリギリの女たち』の原点に戻ったかのような、下品でブラックで、ちょっぴりホロリとさせられるドタバタコメディである。
上映後のティーチ・インでは、まずアルベルト氏がハビエル・カマラに「あなたはいつもアルモドバル監督作品で色々なカツラを着けさせられていますね。それはどうしてですか」と、えっ、いいのっ的な質問を。「それは私がハゲだからです」と、それにまともに答えるほうも答えるほうの、この映画に相応しい軽いノリでスタートした。さらにサービス精神旺盛なハビエルは、「オリンピック開催地選抜のときはマドリードを負かしてくれてありがとう!」等その後もジョークを飛ばし続け、また逆に「アルモドバル監督に日本から何か買ってきてほしいと言われたのですが、何がいいでしょう」と彼が問えば、観客も「オ・モ・テ・ナ・シ」と投げ返す一幕もあり、会場は終始笑いが絶えなかった。
アルモドバル監督についてふたりの俳優の感想は、ブランカ・スアレスは「いつも私は、他の出演者たちと会わないところで演技をしているんです。でも、アルモドバル監督の作品に出演できたことで、わたしの夢が一つかなった」と感慨深げに語り、一方ハビエル・カマラは、監督の横暴さを披露する。「病院の壁の色が気に入らないと言いだしたのだけれど、それは彼が選んだものだったんだ。日の光の加減で色が変わって見えただけだった。あるいは、ペドロ自身の気分でその見え方も変わってしまう。でも私がそれを説明しても全然受け容れてもらえなかった。彼は日を追うごとに不機嫌になってくるんだ」と。確かに衣裳やセット、壁の色、映画の隅々に至るまでが常にアルモドバル印の彼の作品は、こうした彼の完璧主義に支えられているとも言えるのだろう。また、『アイム・ソー・エキサイテッド!』についてハビエル・カマラは「スペインは今大変な経済的な危機に陥って、人々が暗い気分になっていますので、彼はこういったコメディを作って観客に笑ってほしいと考えていたんじゃないかと思います」と、アルモドバル監督の原点回帰の理由を説明。確かに、この作品には社会風刺も多数含まれており、アルモドバル監督のスペインへの愛が本作を作ったとも言えるのだろう。
そして最後に、アルモドバル監督からの日本へのメッセージとして「私は日本を愛していると日本の皆さんに伝えて下さい。日本の映画もまた私に大きな影響を与えました。身体の問題ということではないのですが、出来れば行きたかったのですが、行くことが出来ず残念でした」とハビエル・カマラから伝えられた。それと同時に「とにかく寿司をいっぱい食ってこい」と命じられたことも。
▼『アイム・ソー・エキサイテッド!』作品情報▼
監督:ペドロ・アルモドバル
脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:カルロス・アレセス
ハビエル・カマラ
ラウル・アレバロ
ロラ・ドゥエニャス
セシリア・ロス
ブランカ・スアレス
2013年/スペイン/90分
配給:ショウゲート
公式HP:http://excited-movie.jp/
(C)EL DESEO D.A.S.L.U
※2014年1月25日(土)より新宿ピカデリー他全国公開
▼第10回ラテンビート映画祭開催概要▼
【東京】10月9日(木)~14日(月)
会場:新宿バルト9(新宿三丁目イーストビル9階)
【横浜】10月24日(木)~27日(日)
会場:横浜ブルク13(TOCみなとみらい6階)
【京都】10月17日(木)~20日(日)
会場:T・ジョイ京都
【大阪】11月8日(金)~10日(日)
会場:梅田ブルク7
公式サイト:http://www.hispanicbeatfilmfestival.com/