『バトル・オブ・ヒロミくん!The High School SAMURAI BOY』竹内力さんインタビュー:「これからは、映画をどんどん作っていきますよ。それで皆さんをびっくりさせます」
個性派俳優・竹内力さんがなんと、全国総番長を目指して奮闘する16歳の高校生に扮する『バトル・オブ・ヒロミくん!The High School SAMURAI BOY』が現在公開中だ。
竹内さん演じるヒロミくんは、ヤクザもビビる最強の老け顔高校生でありながら、妹や初恋の相手にはめっぽう優しい純情少年。この異色のキャラクターを演じた竹内さんに役作りの裏側などを伺おうと、竹内さんが社長を務める本作の製作会社RIKIプロジェクトの事務所を尋ねた。すると「どうなんですかね?映画として」と、いきなりの逆質問攻勢。「どれくらいのものが出来るのかと、敢えて多くの予算をかけないで作りました。観客にどう見えるんだろうなぁ。それが一番気になるところですね」と、始まりから“観客を楽しませる”ことにこだわる竹内さんの思いを感じる取材となった。
竹内さんが『ヒロミくん!』について、また、今後の作品づくりについて語ってくださったインタビューをお届けする。
―『バトル・オブ・ヒロミくん!』楽しく拝見しました。不良にヤクザ、それに乱闘シーンも登場しますが、ヒロミくんは強烈キャラとはいえ母性本能をくすぐるところもありますし、大人から子供まで幅広く楽しめる作品ですね。
それは俺がいつも言っていることなんです。(ビデオリリースの)シリーズ前作『ヒロミくん!全国総番長への道』もそうでしたが、老若男女に向けて作っているハードボイルドというか、でも、ある意味(勧善懲悪の)時代劇みたいな。ただ、殴る蹴るはあっても、決して殺傷はしないぞってところですかね(笑)。でも、時代劇って鋭利な長モノでバッサバッサ斬るんだから、すごいことだよ、ある意味。そう考えると、『ヒロミくん!』はよほどソフトですよね。
―本作では、僧侶の集団が敵になりますよね。ヤクザに僧侶、ともに法が及ばない世界の人間が闘う設定がとても面白いと思いました。脚本も宮坂武志監督がお書きになっているということですが、竹内さんも脚本段階から関わられるのですか?
企画はいつも、シノプシス(あらすじ)を読んで「これは面白い」ということで通すんですけど、脚本直しの段階でもいろいろと言いたいことは言いますね。あとは、現場で俺が勝手にやるっていう(笑)。俺はテストと本番で違うことをやるし。それは要するに、スタッフを笑わせたり驚かせることによって、「お客さんもここで楽しめるんだろうな」とか、「笑えるだろうな」とか、現場で実践しながら撮影してるっていうことです。そんな反応を見ながら監督より先に自分が「オッケー!」って言っちゃうことも。じゃあ監督が「今の使っていいんですか?鼻ほじって食べてましたけど・・・」って(笑)。
―あのシーンはちょっとびっくりしました(笑)。
あれはね、キャラメルなんかをちょっと粘っこくしたりして、現場で俺が考えて作るんですよ(笑)。派手に痰を吐いたりするのも、普通はあんな風に「カッ」と出ないからね。だから、ソフトキャンディーなんかを用意して、あんまり量が多いと学ランに付いちゃうので、引き画と寄りとでは伸び具合によって量と噛む時間を調整しながら・・・“ソフトキャンディー具合”っていうのがすごくあるんですよ(笑)。
―竹内さんって素顔は二枚目でカッコいいのに、振り切ったお芝居も平気でされてしまうところに感動すら覚えます。イメージはあまり気になさらない?
監督も最初のころ、いつも「え、そんなことしていいんですか?」って心配していましたね。俺は「いいからやってんじゃん」って言うんですけど。うーん、イメージっていうのがよく分からないんですよ。単純にガキのころから人を笑わせてたので。それをそのまま、この年齢で全国の人の前に出すのは恥ずかしいなという思いもありつつ・・・でもまあ、この映画の中だけだから。監督によっぽど言われて仕方なくこういう芝居をしてるんだろうなって思ってもらえればいいかな(笑)。実は全部自分がやってることなんだけど(笑)。
―「ミナミの帝王」などで印象付けたコワモテ且つ二枚目のキャラクターからすると、ヒロミくんに限らず、保育士を演じた「全開ガール」や『テルマエ・ロマエ』など、最近よく拝見するコミカルなお芝居には意外性があります。
「ミナミ〜」の萬田銀次郎も自分の一部分だけど、おちゃらけるのも自分の一部分ですよね。ヒロミくんの場合は、二枚目的な表情が一瞬でも出ないように注意しながら芝居してます。動き方も歩き方もそう。気を抜くと普通にこうやって(颯爽とした歩き方を実演してくださる)歩いちゃうんですよ。ヒロミくんは、ゴリラやゴジラのようなイメージでキャラクターを作ったので、ふっと意識が逸れて動きがおろそかにならないように、神経は使いました。
―アクションもキレキレでしたが、日ごろからどんなトレーニングを?
いや、何もしてないですよ。
―ホントですか?蹴り足もキレイに上がっているし、本当は何か・・・
いや、何も。「やらなきゃヤバイよ」とは周りから言われてる(笑)。ジムには入ってるんですけど、家の目の前でいつでも行けるから、逆に行かないですねぇ(笑)。アクションシーンは、一応殺陣師の方に流れを作ってもらうんだけど、俺たちのは型ではなくて芝居。アクションの場合は、役によって姿勢や動きが違うので、「このキャラクターの場合そうはできない、こうやる」っていうことは意見します。あと、ヒロミくんはパンチや蹴りが重い。回し蹴りも(ちょっと前かがみの姿勢から実演)こう行くんでしょうね。ゴジラっぽいイメージで。
―「低予算で面白い映画をどこまで作れるのか」とおっしゃっていましたが、そのあたりについてもっとお聞かせください。
俺たちVシネマを色々作ってきたけど、その10分の1ぐらいの予算で単館系の映画を作ってる人がいる。それでなんだか、“映画の方が上”って見られる風潮があるのがすごく腹立たしかったんです。10倍の予算をかけても、ただ劇場公開してないだけでなぜそんな下に見られるのか?だったら、「低予算映画のレベルで作ってみようぜ」っていう反骨精神みたいなものもあり、Vシネマだった前作よりさらに予算を下げて作りました。それで劇場公開して「映画」って呼ばれるならVシネマも映画じゃないか!っていう、ある意味、Vシネマの格上げを狙ってるんです。
だって、「ミナミの帝王」観たことあるでしょ?面白いでしょ?観てないだけで馬鹿にされる悔しさを20年近く感じてるんですよ。だから、そろそろ認められるには、映画を作っていくしかないな、と。作品を作ることに関しては、映画もVシネマも同じ。俺は出演本数だけは普通の俳優さんより多くて、500本以上の現場を見てきているので、自分でプロデュースすることもできると思う。これからは、映画をどんどん作っていきますよ。それで皆さんをびっくりさせます。主役はやりませんけどね。
―主演でバリバリ二枚目の竹内さんも劇場で見てみたい気がしますが。
いやー、俺が役者として認めてもらえるのは多分50年後ぐらいじゃないですか(笑)?それより、まずは製作会社社長として、来年からバンバン映画を公開していきます。海外の映画祭で賞を狙ってますから。いわゆる“逆輸入”ですよね。しち難しい映画じゃなくて、誰が観ても面白い作品を作っていくと思います。もう製作済みの来年公開の素晴らしい映画もあります。間違いなくビックリしますよ。
―日本映画をどんどん面白くしていただけると嬉しいです。その製作済みの作品にも、やはりご自身はお出になってないのですか?
出てません。というか、うちの作品だからって出るのはすごく嫌。俺が出ることによって、作品に変な色が付くと嫌なんです。個性強いじゃないですか、俺って(笑)。それがおかずとして入るだけでも邪魔をしてしまう。いつもお客さんになったつもりで脚本作りをしてるので、“この役は俺しかいない”って思ったときに、監督にもそう望んでもらえるならば「じゃあ出ようかな」ぐらいの感じ。そこはすごい慎重になりますね。作品をダメにしたくない。なるべく100点じゃなくて、160点、170点をとりたい。作る以上はやっぱり、大きい海外の映画祭で賞を狙っていく。そういう作品じゃないと、逆に作りたくないという気持ちはありますね。
Profile
1964年1月4日生まれ、大分県出身。86年映画デビュー。「難波金融伝・ミナミの帝王」シリーズの萬田銀次郎が当たり役となり、人気を博す。近年の主な出演作は「仁義」シリーズ(94~)、「影の交渉人 ナニワ人情列伝」シリーズ(09~10)、「岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説」シリーズ(01~07)、『バトル・ロワイアルⅡ 鎮魂歌』(03)、『大日本人』(07)、「全開ガール」『テルマエ・ロマエ』(11)、「みんな!エスパーだよ!」(13)など。
<取材後記>
コワモテと形容されることの多い竹内さん。正直、「ぶっ飛ばされたらどうしよう・・・」という、今となっては失礼極まりない若干の恐れを抱きつつ門を叩いた筆者だったが、気さくでチャーミングな人柄にすっかり魅了されることとなった。
俳優であると同時に、ビジネスマンとしての視点も兼ね備えた竹内さん。今後のRIKI プロジェクトの活動にも要注目だ。俳優、社長、どちらの立場でも根底にあるのは“面白い作品を作る”という徹底したこだわり。まずは『バトル・オブ・ヒロミくん!』で、エンターテイナーとしての竹内さんの一面を劇場で堪能してほしい。
▼作品情報▼
『バトル・オブ・ヒロミくん!The High School SAMURAI BOY』
監督・脚本:宮坂武志
製作総指揮・主演:竹内力
出演:栞菜、倉葉さや、根岸大介、中野裕斗、山口祥行ほか
主題歌:「男の時代」竹内力
配給:RIKI プロジェクト
2013年/日本/101分
(c)2012 RIKIプロジェクト
キネカ大森、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開中!