ザック・エフロンが語る『ペーパーボーイ 真夏の引力』の魅力

原作を超える「すごい結末」

ザック・エフロン

アカデミー賞2部門受賞の『プレシャス』(09)で脚光を浴びた、リー・ダニエルズ監督の最新作『ペーパーボーイ 真夏の引力』。1969年夏、舞台はフロリダ州モート郡。ジャック(ザック・エフロン)の兄で新聞記者ウォード(マシュー・マコノヒー)が、死刑囚ヒラリー(ジョン・キューザック)にかけられた冤罪疑惑を調査するために帰省する。ジャックはウォードの仕事を手伝うこととなるが、ヒラリーの婚約者で、淫靡な色香を漂わせる、21歳年上のシャーロット(ニコール・キッドマン)に一目で心を奪われる・・・。冤罪事件の真相究明を軸として、一筋縄ではいかない人間関係、そして人種差別や貧困などの社会問題を絡めつつ、高温多湿でねっとりとした真夏の空気感に包まれながら、物語は展開していく。

主役ジャックを演じるザック・エフロンは、ティーンを中心に人気の美形アイドルというイメージが強い。本作は、女性にオクテな童貞くんの“ひと夏の経験”を描いた作品といえるが、ザックは見ているこちらが気恥ずかしくなるような白ブリーフ一丁姿を堂々と披露。また、兄へ向ける複雑な思慕、シャーロットへの抑えきれない恋心などの内面的苦悩も、時に繊細に、時に大胆に表現している。本作への出演を「すばらしい経験」と興奮するザックが、本作について語っている。

 共演は、アカデミー賞女優ニコール・キッドマン、マシュー・マコナヒー、ジョン・キューザックなどのハリウッドの実力派俳優たちだ。「現場にはクリエーティブな人が集まっていて一つの目標を達成するために夢中になっていた。共演者も監督のリー(・ダニエルズ)もすばらしかった、みんな最高だったよ。この映画の大きなテーマは、大人になるということだ。ジャックは学ぶんだよ。大切な人たちから人生を教わり教訓を得る。僕自身はまだ分かってないこともある、役者業も理解しきれてないしね。今回の撮影では、共演者たちに助けられたよ」と先輩俳優たちへの感謝の弁。特に、ものすごいアバズレっぷりを見せるニコールとの絡みも話題だが、「ラブシーンはいつだって緊張するよ」と前置きしつつも、「でも撮影が始まってしまえば、ほかのシーンと同じだよ。それに簡単だったよ、ニコールにキスするだけだ」と余裕のコメントを残した。

また、マコノヒー扮する兄ウォードと弟ジャックの関係は、ただの仲のいい兄弟というわけではない。その点についてザックは、「突然戻ってきた兄に対して、ジャックは戸惑いがあるんだ。この映画が特別なのは、それぞれの関係が現実的だからだよ。軽くて楽しく見えるシーンが暗いシーンに通じていて闇が浮かび上がる。映画が現実にしっかり根付いているんだ」と指摘する。ちなみに、マコノヒーの怪演(と美尻)も本作の見どころの一つ。余談だが、彼は『マジック・マイク』(8月3日公開)でもキレキレの演技(と美尻)を見せつけているので、こちらもお見逃しなく。

そして本作の魅力について、ザックは「把握しきれないほどたくさんの要素が詰まっているよね。最初に脚本を読んだ時はよく分からなかったけど、すごく探求的で人物が詳細に描かれているんだ。この映画は、何か一つの要素に限定することはできないよ。多くの質問を投げかけているし、多くの疑問を生じさせている。そういう意味で、考えさせられる映画だよ。刺激を与えてくれる」と語る。原作は全米ベストセラーの「ペーパーボーイ」(ピート・デクスター著)。原作を読んだときは、あまりにも強烈で「とにかく衝撃を受けた」が、「結末は映画の方がすごい。完全に打ちのめされたよ」と映画の出来に自信を覗かせた。

休憩時間もトレーラーもなかった撮影現場。だからこそキャスト、スタッフ全員が常に動き回ることが必要だったそう。だが「全員が一致団結するんだ。まさにこれが映画づくりだよ」と充実ぶりを振り返るザック。その結果から産み出された濃密かつ強烈なアンサンブル演技を、ぜひとも堪能してほしい。

〈プロフィール〉
ザック・エフロン Zac Efron
1987年カリフォルニア州サンルイスオビスポ生まれ。11歳の頃から演技を始め、「ER 緊急救命室(シーズン10)」などのTVドラマのゲスト出演でプロの俳優としてのキャリアを踏み出す。2006年にはディズニー・チャンネルの「ハイスクール・ミュージカル」における主人公トロイ・ボルトン役で大ブレイク。翌年のパート2を経て、『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』(08/ケニー・オルテガ監督)でも主演を務め、MTVムービー・アワードの男優賞を受賞。またブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品『ヘアスプレー』(07/アダム・シャンクマン監督)ではMTVムービー・アワードのブレイクスルー演技賞に輝いた。
その他出演作:『きみがくれた未来』(10/バー・スティアーズ監督)、『ニュー・イヤーズ・イブ』(11/ゲイリー・マーシャル監督)、『一枚のめぐり逢い』(12/スコット・ヒックス監督)など。

▼作品情報▼
監督・脚本・製作:リー・ダニエルズ
原作・脚本:
出演:ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザック
原題:The Paperboy
製作:2012年/アメリカ/107分
配給:日活
©2012 PAPERBOY PRODUCTIONS,INC.
公式サイト:http://www.paperboy-movie.jp/
第65回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
第70回ゴールデン・グローブ賞助演女優賞ノミネート(ニコール・キッドマン)

7月27日(土)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー