【TIFF】フラミンゴNo.13

大自然と人間の業の対比

(第23回東京国際映画祭・コンペティション部門)

雄大で美しい自然の中で強まっていく人の執着や欲望を描いた秀作がコンペティション部門に出品された。

イラン最果ての流刑地で生活する人々。そこでフラミンゴ猟に取りつかれる男と、その男を愛する様になる未亡人と、その未亡人を愛し猟師と未亡人の仲をねたむ男。この3人を中心に物語は展開されていく。

ここに出てくる3人に共通する事、それは強い執着。猟師は未亡人と結婚してもフラミンゴの事が決して頭から離れない。未亡人は再婚した猟師が行方不明になり帰ってこなくても猟師の事を決して死んだとは思わない。未亡人を愛した男は未亡人が猟師と結婚しても未亡人をあきらめられない。

この流刑地という自然は美しいが何もない最果ての地では、人のこだわりや欲望はむしろその強さを増すのだと思う。今の日本、特に東京の様に人と物が溢れた場所では次々に新しいものを得る事は可能だが、何もない流刑地では一度手に入れた物やこだわりを捨てるという事は難しいのだろう。だってそれを捨ててしまえばいったい何が残るというのか。何を生きがいにして生きていけばいいのか。

この映画の優れたところは、人間の欲望や執着を美しい自然を舞台に描いた事で、より人間の業の深さが強く表現されている事だと感じた。流刑地というシチュエーションとフラミンゴ猟という馴染みのない猟が描かれている事で、日本人から見ると文化の違いから理解出来ない部分もあるかもしれないが、ここには人間の普遍的な姿がある。そこに注目して観てみると、違った見方の出来る映画だろう。

Text by:石川達郎
オススメ度:★★★☆☆

80分 2010年 イラン
監督:ハミド・レザ・アリゴリアン
キャスト:バラン・ザマニ、ラスール・ユーナン、モハマド・タギ・シャムス・ランガルディ、アブドッラ・アミル・アタシャニ他
第23回東京国際映画祭公式サイト:http://www.tiff-jp.net/ja/

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