『華麗なるギャツビー』L.ディカプリオにしか出せない円熟期の輝き
『ロミオ+ジュリエット』(96)のバズ・ラーマン監督が、再びレオナルド・ディカプリオ主演で文学史に残る傑作小説「グレート・ギャツビー」を映画化。しかもディカプリオにとっては、あの『タイタニック』(97)以来の(むしろ避けてきたと言っていい)ラブストーリーとなると、ファンとしては「あの美しいレオ様をもう一度!」と否応なしにも期待は高まる。だが、ファン歴20年を自称した上で敢えて言わせてもらうが、『華麗なるギャツビー』のディカプリオ=ジェイ・ギャツビーは決して美しい男ではない。
ギャツビーとは何者か――?第一次世界大戦後の好景気で世の中が浮かれていた1920年代のニューヨーク。宮殿のような大豪邸で夜ごと豪華なパーティを繰り広げる謎めいた男ジェイ・ギャツビーの隣家に、この作品の語り部となるニック(トビー・マグワイア)が引っ越してくるところから物語は始まる。やがてニックにもパーティへの招待状が届くが、姿を現したギャツビーからニックの親戚デイジー(キャリー・マリガン)と彼の再会を仲介するよう頼まれる。その依頼の裏には、ギャツビーが抱き続けた“夢”と、彼の正体に関わる秘密が隠されていた・・・。
最近ではすっかり大物スターの貫禄がついたディカプリオ。だが、丸っこい童顔と高めの地声のせいか、彼が眉間にしわを寄せて熱演を見せれば見せるほど妙に滑稽なのである。それがギャツビーという、どこか胡散臭さを漂わせながらも不思議な活力と魅力にあふれ、ある“夢”のために人生のすべてをかけて成り上がった男という役柄にピタリとはまる。バズ・ラーマンが『ロミオ+ジュリエット』でディカプリオ美青年期の絶頂を映しとったとするならば、本作では彼しか出せない円熟期の輝きを魅せつけたと言えるのかもしれない。
『ロミオ+ジュリエット』では古典を大胆な現代風にアレンジしつつも、シェイクスピアの台詞を活かしたバズ・ラーマンらしく、今作も“狂乱の20年代”と呼ばれる時代を煌びやかな3D映像で表現しながらストーリーや台詞は原作にかなり忠実だ。贅沢な衣裳、美術、音楽とスタイルも完璧。ただ、1920年代の縮図を描いた傑作と言われる「グレート・ギャツビー」が持つ時代の匂い―階級社会の膿や拡大する経済活動の裏に潜む闇―までも感じさせるのは難しすぎたか。しかし、ギャツビーという男を通してシンプルかつ力強くメッセージは伝わり、過剰なまでに豪華絢爛な映像の洪水だからこそ、宴のあとの顛末は哀しくて切ない。
▼作品情報▼
華麗なるギャツビー
原題:The Great Gatsby
監督:バズ・ラーマン
原作:F・スコット・フィッツジェラルド
出演:レオナルド・ディカプリオ、トビー・マグワイア、キャリー・マリガン、ジョエル・エドガートン
配給:ワーナー・ブラザース映画
2013年/アメリカ映画/142分
(C) 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved
2013年6月14日(金)より丸の内ピカデリーほか全国公開(2D/3D同時公開)
公式HP: www.gatsbymovie.jp