探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点

笑って、笑って、最後にほろ苦い

第1作から2年、あの男が帰ってきた。札幌の歓楽街ススキノをこよなく愛し、酒好きで女に弱く、BAR「ケラーオオハタ」を根城にする探偵。ある日、親しくしていたオカマのマサコちゃんが何者かに殺される。背景に大物政治家が絡んでいることを掴んだ「俺」は、政治家の周辺団体から狙われるハメに…。

前作に引き続き、監督&脚本家はあの「相棒」シリーズを手掛けたスタッフ陣。と言うと、緻密な社会派推理ドラマを想像してしまうかもしれないが、本シリーズに関しては、そういったものを期待してはいけない。こんな設定ありえないとか、話がうまくいき過ぎとかイチイチ突っ込むと楽しめない映画なのである。肝心の事件の解明方法についても、推理して謎に辿りつくと言うよりはむしろ敵の方からやって来るパターン。探偵が襲われて、腕っぷしの強い相棒がいつも遅れて助けにやって来る展開も(「お前、遅ぇんだよ!」と言うセリフも)お約束。大泉洋&松田龍平演じる強烈なキャラクターで引っ張っていく、B級テイスト溢れるバディムービーなのだ。

とはいえ、すべてが現実離れしたファンタジックな話かと言うと、そうでもない。反原発派の政治家と彼を巡る人々、バイオリンをやめたバイオリニスト、ススキノに生きる男たち女たち。今回も探偵の周囲には異色な人間が揃い、様々な生き方・価値観を彼に見せる。理想のために自分や他人を犠牲にできる者。逆に他人のために自分を犠牲にできる者。多数派の前に沈黙する少数派。しかし、探偵は自らの正義感やポリシーを相手に押し付けない。こうあるべきという正解が、ひとつではないことがわかっているがゆえに、われわれ観客にもそれを強要しない。ただほろ苦く感じるのは、何かを犠牲にしないと生きられない世の中があると言う現実、ひたむきに生きる者が全うな幸せを手に入れられるとは限らないということ。そして、そんな理不尽さを知っている探偵だからこそ、着地できる場所があるのだ。

前作より謎解き要素とハードボイルド感は少なくなり、ハチャメチャっぷりは格段に強くなった印象。しかし、相変わらず最後にはホロッとさせられる。シビアな時代だからこそ、こういう探偵映画があってもいいんじゃないだろうかと思わせてくれる。やっぱり、次が楽しみだ。

▼作品情報▼
原作:東直己「探偵はひとりぼっち」
監督:橋本一
脚本:古沢良太、須藤泰司
出演:大泉洋、松田龍平、尾野真千子、ゴリ、渡部篤郎
2013年/日/119分
(C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会
公式サイト:http://www.tantei-bar.com/

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