【TIFF】小学校!(コンペティション)レビュー&ティーチイン取材
(第23回東京国際映画祭・コンペティション作品)
本作はこの映画祭でいずれかの賞を獲るのでは、と思った作品であり、受賞によって多くの人の目に留まればいいな、と思った力作だ。
今年話題になった「告白」や「パリ20区、僕たちのクラス」に見られる教師 VS 生徒の構図ではなく、子供の驚くべき創造力と感受性に焦点を当てている。美術教師の試みが子供の可能性を無限に引き出し、奇跡的ともいえるクライマックスに導いていく様子は圧巻。
監督のイバン・ノエルは現役の教師でもあり、映画に出てくる子供はみな彼の教え子だそう。絵を描いたのも彼らで、実際に起こった出来事を再現し、撮影したというから驚きだ。
騒いだり動き回ったり、子供はとにかくエネルギッシュだが、そのエネルギーを抑制するだけでなく、芸術に昇華させようと奮闘する一人の美術教師。画期的な指導方法は賛否両論で、保守的な女校長(内館牧子似!)との対立は見どころの一つだ。しかし子供たちはその指導によって、表現の楽しさに目覚めていく。そして大人たちも、眠っていた子供たちのポテンシャルに驚嘆し、その純粋な輝きにいつしか救われるようになる。この双方向のコミュニケーションはとても魅力的だ。
上映後のティーチイン(10月25日)で、教師役のフランシスコ・アルフォンシンさんは次のように語っている。
「監督から、学校で起こる奇想天外の話をいつも聞かされていました。撮影に入るまでは誇張されているのだろうと半信半疑だったのですが、撮影で子供と接しているうちに、そういった話が本当だったのだと実感しました」
なかでも、多動症の少年(ホセ・ホアキン君)のエピソードがとても印象的であるが、彼については、
「ホセ・ホアキンは実際に多動症です。撮影中も決まった時間に薬を飲ませていました。彼の両親は出演後の彼と周りの影響について心配されていたので、『彼を出演させて良いのだろうか』ということについては何度も話し合いました。結果的には出演して良かったと思っています。彼は自分の症状や才能に直面し、客観的に見ることができたのですから。それに、実はノエル監督も子供の頃から今でも多動症なんですよ(笑)」
学芸会のシーンで、ホセ・ホアキン君は劇の舞台監督を務めている。彼も将来はノエル監督のように映画監督になるかもしれない。はたまた、スペインが生んだピカソやダリのような芸術家かもしれない。
こんな先生の美術の授業なら、私も受けてみたかった。
▼作品データ
英題:Primary!
スペイン/2010/107分
監督:イバン・ノエル
出演:フランシスコ・アルフォンシン、ホセ・ホアキン他
Text by 鈴木こより
2010年10月27日
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