【FILMeX】楢山節考 デジタルリマスター:トークイベント

木下惠介生誕100年祭:助監督を務めた吉田喜重監督が木下作品を語る!

(第13回東京フィルメックス特集上映作品)

吉田喜重監督

 東劇で開催される「木下惠介生誕100年祭」 が『楢山節考 デジタルリマスター』で幕を開け、トークイベントには本作を含む10本の木下作品で助監督を務めた、映画監督の吉田喜重さんが登壇した。吉田監督は本作の映画化を木下監督に薦めた張本人でもある。トーク時間延長を気にしながらも、作品解説や当時の貴重なエピソードを丁寧に語ってくれた。

 吉田監督は松竹に入社後、木下監督からオリジナルの脚本が認められ、『夕焼け雲』(56)から4年間、木下作品の助監督を務めた。「松竹の他の監督と木下さんの映画の撮り方は全然違っていました。木下さんはシナリオを口述するんです。それを助監督がすべて筆記する。ト書き(場面設定)から語りだし、女性のセリフであれば女性の言葉と声色を使って語ります。映画に吹き込む呼吸やリズムを自分の肉体の中に持っていました。木下映画が感情的であると言われるのは、そこにあると思います」と吉田監督。

『楢山節考』©1958 松竹

 深沢七郎の小説『楢山節考』の映画化について、木下監督は「民話風にはしたくない」という考えを持っていたようで、音楽やセットを歌舞伎風にし、あえて演劇的な手法を用いている。「木下さんは姨捨(おばすて)伝説はあくまで伝説であり、事実ではないという視点で作ろうとしたのだと思います。ラストに唯一リアルなカットで、信州の雪景色のなかを蒸気機関車が走るシーンを入れていますが、あの瞬間、たぶん皆さんも違和感を覚えたと思います。最後に現実の映像を入れることで、それまで見ていたものは現実ではない、つまり姨捨伝説は現実の話ではない、ということを木下さんは表現したのだと思います」。

『陸軍』©1944 松竹

 吉田監督曰く、映画監督は“観客のことだけを考えて撮る監督”と“観客を無視して自分のために撮る監督”のどちらかになるそうだが、木下監督については「その間を自由に行き来した唯一の監督」と評した。だからこそ、それぞれの作品がまったく違う個性を持っているのだという。
そして最後は、木下監督らしいエピソードとして、陸軍省から依頼を受けて撮った『陸軍』(44)のラストシーンに触れ、トークショーを締めくくった。「ラストに出征する息子を延々と見送る母親(田中絹代)の視線を入れています。そこには『生きて帰ってきなさい』という無言のメッセージがあり、当時の戦争映画のそれとは異なります。木下さんは戦争中の国策映画ということを当然承知していたので、おそらく無意識的に撮ったのだと思います。国策映画で反戦のショットを入れるなんて危険すぎるからです。ところが、危険だということを忘れてそのまま作品にしたのです。そのために、彼は松竹を辞して、戦後まで映画を撮れなくなるんです」。

 今回はデジタルリマスター版での上映が実現し、吉田監督も「特殊な技術を用いて撮った作品だったのでネガの劣化が激しかったのですが、本当にきれいになっていますね」とコメント。『二十四の瞳』(54)と『カルメン故郷に帰る』(51)もデジタルリマスター版で上映される。
「木下惠介生誕100年祭」は12月7日まで東劇にて開催され、ニュープリント5本を含む24作品が上映される。『楢山節考』は、29日19:00、12月1日14:00にも再度上映。
※上映作品詳細とスケジュールは公式サイトでご確認ください。

(取材・文:鈴木こより 撮影:清水優里菜)

▼『楢山節考』作品情報
原作:深川七郎「楢山節考」(56)
出演:田中絹代、高橋貞二、望月優子、石川團子(二台目市川猿翁)
制作:1958年/98分/松竹大船
58年ヴェネツィア国際映画祭出品


▼「木下惠介生誕100年祭」概要
期間:2012年11月23日(金)〜12月7日(金)
場所:東劇
上映作品(24本)※Newはニュープリント
『歓呼の町(New)』『陸軍』『女(New)』『肖像』『お嬢さん乾杯』『婚約指輪(エンゲージリング)(New)』『カルメン故郷に帰る デジタルリマスター』『カルメン純情す』『日本の悲劇』『二十四の瞳 デジタルリマスター』『野菊の如き君なりき』『夕やけ雲(New)』『楢山節考』『風花』 『今日もまたかくてありなん』『笛吹川』『永遠の人』『死闘の伝説(New)』『香華 前篇/後篇』


▼第13回東京フィルメックス
期間:2012年11月23日(金)〜12月2日(日)
場所:有楽町朝日ホール・東劇・TOHOシネマズ日劇
公式サイト:http://filmex.net/2012/

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