人生の特等席

俳優クリント・イーストウッドを見られる幸せ

第25回東京国際映画祭のクロージング上映『人生の特等席』が11月23日劇場公開された。クロージングにふさわしい好感の持てる映画で、4年振りにクリント・イーストウッドが主演した映画を 楽しむ事が出来た。

メジャーリーグ最高のスカウトマンと言われたガス・ロペル(クリント・イーストウッド)だが、ハイテク機器を使ったデータを重視せず感覚に頼る頑なさで、球団は次の契約の延長をどうするか考え出している。加えて視力の衰えが隠せなくなり、次回のスカウトに次の契約がかかっている事を知った友人で上司のピート(ジョン・グッドマン)がガスの付き添いに頼んだのは、ガスの娘で弁護士のミッキー(エイミー・アダムス)だった。昇進がかかっている大事な時期のミッキーだったが、父親を放ってもおけず仕方なく同行する事になる。そこで、かつてガスがスカウトしたピッチャーで今は他球団のスカウトマンになったジョニー(ジャスティン・ティンバーレイク)とガスが再会し、娘とともに注目株の強打者をスカウトするかどうかの確認をし、出した結論は映画の原題でもある「TROUBLE WITH THE CURVE」、カーブに難あり。カーブが打てない打者という結論だった。そこで球団側の出した結論は・・・。

飽くまで主観であるが、イーストウッドが監督・主演した数々の映画と比べてしまうと、この映画は凡百の映画の域を出ていないと思う。そういう意味で、同じく今年劇場公開された高倉健の映画『あなたへ』を観た時と同じ事を感じた。高倉健が主演でなければ普通の出来だった『あなたへ』と同様、この映画はイーストウッド主演でなければ普通の映画。しかし、名優クリント・イーストウッドを見られる、ただそれだけでいいのだ。最近のイーストウッド監督の映画は、観に行くたびにまなじりを決して立ち向かわねばならぬ、みたいなところがあって、それはもちろん素晴らしい作品であるのだけれど、ちょっと映画でも観ようかなという気分の時に観る映画をイーストウッドの頑固親父キャラを生かして作ってくれたこの映画は、多くのイーストウッドファン、映画ファンの眼鏡にかなう映画だと思う。イーストウッドが弟子と認めたロバート・ロレンツに監督を任せ、俳優に専念出来た事で、イーストウッドものびのびと自分に合った頑固親父を演じている(様に見える)。だからたとえ普通の出来の映画であっても、文句のつけようのない映画と言っていい。

こう書くと、実はつまらない映画なんじゃないかと感じた方もいるかもしれない。しかしそれはイーストウッド自身が監督した作品の質が高すぎるというだけの話しで、この映画は十分にいい映画であり、父と娘の誤解と和解や、父と息子の様なジョニーとの関係や、娘とジョニーが魅かれ合う場面など、見どころの多い作品である。

▼作品情報▼
監督 :ロバート・ロレンツ
キャスト :クリント・イーストウッド、エイミー・アダムス、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・グッドマン、ロバート・パトリック、マシュー・リラード、スコット・イーストウッド、ジョー・マッシンギル

2012年11月23日より丸の内ピカデリー3ほか全国にて公開

公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/troublewiththecurve/

(C) 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

トラックバック-1件

  1. soramove

    映画「人生の特等席」タイトルが立派すぎる、もっとしみじみした映画…

    映画「人生の特等席」★★★★ クリント・イーストウッド、エイミー・アダムス、 ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・グッドマン、 ロバート・パトリック、マシュー・リラード出演 ロバート・ロレンツ 監督、 111分、2012年11月23日より全国にて公開 2012,アメリカ,ワーナー・ブラザーズ (原題/原作:TROUBLE WITH THE CURVE)…

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