『ダークナイト ライジング』クライマックスに相応しい混沌
途切れることない高揚感の末に、シリーズ3部作の豪快な完結を見届ける。これは快感。クリストファー・ノーラン監督、ありがとう。
『ダークナイト ライジング』は、前作『ダークナイト』(08)の8年後が舞台だ。地方検事ハービー・デントの死の責任を被り、殺人者となった闇の騎士ダークナイト=バットマン(クリスチャン・ベール)は、人々の前から姿を消したままだった。市民に尊敬されているデントが実は狂気のトゥー・フェイスとなって死んだことは、バットマンとゴードン市警本部長(ゲイリー・オールドマン)の胸だけにしまわれた秘密である。その間、ゴッサム・シティは犯罪防止のための「デント法」によって重圧的な取り締まりを行い、平和な社会を保っていた。少なくとも、表面上は……。やがて強靭な肉体を持った冷酷なテロリスト・ベイン(トム・ハーディ)が現れる。
『インセプション』(10)でもノーランとタッグを組んだ精悍系ハンサム、トム・ハーディがこんな姿に……と一女性ファンの視点で軽くショックを受けつつも、怪物的な強さの敵役ベインとバットマンの死闘に手に汗握る。ベインが怒りや痛みといった暗いエネルギーを呑み込んだ悪の化身ならば、バットマンもまた怒りや悩みを抱えるダークヒーローである。2人の“負のパワー”がぶつかり合う闘いに、主要キャストが総力を上げて参戦する。善とは?悪とは?バットマンがシリーズを通して投げかけてきたシンプルかつ究極の問いが市民ひとりひとりに改めて突きつけられ、ゴッサム・シティを街ごと闘いが呑み込んでいく。狂気のジョーカーがひたすら不気味だった『ダークナイト』のヒリヒリする心理戦から一転、それは、まさにこの3部作のクライマックスに相応しい混沌だ。
主要なアクションシーンの全てをIMAXカメラで撮影したという映像はもちろん見応え十分だが、『バットマン ビギンズ』(05)に始まった“ノーラン版バットマン伝説”の伏線が、この最終章できっちりがっちり回収されていく気持ち良さといったらない。ストーリーテリングの上手さに舌を巻く。前2作の記憶が薄れている方は、はやる気持ちを抑えてまずレンタルDVD店に駆け込むことをお薦めする。
3部作スタートからの歳月を経て、円熟味を増した容貌と演技で映画に重みを与えるベールやオールドマン、マイケル・ケインやモーガン・フリーマンらお馴染みの面々に加え、今回新たに警官役で加わったジョゼフ・ゴードン=レヴィットが若々しい情熱を吹き込む展開も、過去から未来へつながるダイナミックな時間軸を意識させて見事である。しかし、『インセプション』といい今作といい、いかにも草食系で気弱そうなジョゼフが(あくまで見た目)、ノーラン作品で正義感に燃えるキャラを演じるとどうしてこんなにカッコよく見えるのだろう。ノーラン監督、ステキなジョゼフもありがとう。
▼作品情報▼
『ダークナイト ライジング』
原題:THE DARK KNIGHT RISES
監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
脚本:ジョナサン・ノーラン
原案:デイビッド・S・ゴイヤー
出演:クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、アン・ハサウェイ、トム・ハーディー、マリオン・コティヤール、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、モーガン・フリーマン
配給:ワーナー・ブラザース映画
2012年/アメリカ/165分
7月28日(土)より丸の内ピカデリーほか全国公開
<7月27日(金)先行上映決定!>
公式サイト:http://www.darkknightrising.jp
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