『フラメンコ・フラメンコ』コントラストが織り成す極限の美

サラ・バラス

フラメンコといえば“バラを咥えちゃったりする情念系のダンス”と思う方も多いのではないだろうか。しかし実は、重厚でクラシカルなものから陽気で庶民的なもの、またタンゴや創作バレエ風のものまで、時代の移り変わりとともにその可能性を広げながら命脈を保ってきた、バラエティ豊かなダンスなのである。


スペイン映画界の巨匠カルロス・サウラ監督による本作は、史上最高のフラメンコ歌手、ダンサー、ギタリストのパフォーマンスを集めたドキュメンタリー。セリフもなければ、説明的な字幕もほとんどない。最高峰といわれるアーティストたちのパフォーマンスが、それに合わせた舞台演出やカメラワークによって最大限に引き出され収録されている。一瞬たりとも見逃せない妙技が次々とスクリーンに映し出され、ほぼ全部が見せ場といえる贅沢な内容であるが、やはりカリスマダンサー、サラ・バラスの表現力は格別。人間業とは思えない超絶タップは鳥肌モノだ。

本作ではさまざまなフラメンコが紹介されているが、どれも静と動のコントラストが見事で思わず息をのんでしまう。まるで、それぞれの人生のドラマを見ているかのよう。このスペクタクルに魅了されてしまった私は本作を2度鑑賞したのだが、あることに気がついた。静から動への緊張感は闘牛のそれと同じであるし、繊細かつ力強いリズムはスペインサッカーの足技と通じるものがあるのではないか。やはりフラメンコはスペイン人のDNAと文化を色濃く反映した芸術なのだろう。芸術を愛する人であれば、必ずや心奪われるものがある作品だと思う。
(※この記事は2010年にラテンビート映画祭で上映された際に書いたものを再掲したものです)

Text by:鈴木こより
オススメ度:★★★★★

2012年2月11日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

原題:FLAMENCO FLAMENCO
製作年:2010年、製作国:スペイン
監督:カルロス・サウラ
出演:ホセ・メルセ、サラ・バラス、エバ・ラ・ジェルバブエナ、パコ・デ・ルシア
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第7回ラテンビート映画祭