ブリッツ

変わらないジェイソン・ステイサムの、新たな境地

(C) 2010 Blitz Films Limited.

クールという言葉はジェイソン・ステイサムを評して何度も言われた事だろうと思うが、この映画のクールさは一味違う。新たな境地と言ってもいいだろう。

サウスロンドン警察の刑事ブラント(ジェイソン)は、ダーティハリーの様な犯罪者を容赦なく痛めつけるタイプの刑事だが、仲間からの信頼は厚い。
そのサウスロンドン警察の警官が次々に殺害される事件が起こり、妻を亡くしたばかりの親しい上司まで殺害され怒りに燃えるブラントは、新しく相棒になったゲイのナッシュ巡査部長(パディ・コンシダイン)と捜査を進めるうち、ブリッツと名乗る犯人を追い詰め逮捕に至るのだが・・・。

『トランスポーター』や最近公開された『メカニック』など、ジェイソンのこれまでの映画は、クールでハードでありながらもユーモアの味付けがあり、そこに親しみやすさやジェイソンの可愛らしさ(?)を感じさせるところが魅力的だったのだが、この映画はそういうユーモアや親しみやすさの要素を剥ぎ取り、ゴリゴリにハードなクライム・サスペンス・ムービーに仕上がっている。

静かだが激しいこの映画、ジェイソン・ステイサムの肉体の様に余計なものを排除した、鋼の剣の様にソリッドな映画だ。殺害シーンで観客をあっと言わせようとか、会話のシーンで情緒に訴えて観客に感情移入させようとか、そういう生っちろい映画じゃない。女子と子供の観客は無視か?と言いたくなりそうな映画だが、観てると絶対誰もが目を離せないだろう。ジェイソンの元々持っているキャラクターをうまく使い、優しさと非情さの同居する主人公を魅力的に見せているし、相棒のナッシュの堅実さや犯人のワイス(アイダン・ギレン)のくだらなさもストーリーを興味深くさせるいいキャラクターとなっている。
犯人の追跡シーンでのいきなりの爆音ミュージックに代表されるUKロックが映画のかっこよさを際立たせているし、ラストの痛快極まる結末には観客のアドレナリンが爆発する事は間違いないだろう。一見暗い気持ちになりそうな映画だが、観終わった後に熱い気持ちにさせてくれる最高の映画に仕上がっている。

もうアクションだけでなくサスペンスでも、ジェイソン・ステイサムはこのジャンルの第一人者になったと言って差し支えないと思う。彼が出る、それだけでワクワクする。他にはもう何も言う事はない。

▼作品情報▼
監督:エリオット・レスター/脚本:ネイサン・パーカー/原作:ケン・ブルーウン
キャスト:ジェイソン・ステイサム、パディ・コンシダイン、アイダン・ギレン、ザウエ・アシュトン、マーク・ライランス、デイヴィッド・モリッシー
配給:ショウゲート/宣伝:プレシディオ/協力:ハピネット
2011年/イギリス/カラー/スコープサイズ/SRD・DTS・SDDS/原題:BLITZ/97分/PG-12
10月15日(土) 新宿バルト9ほか全国ロードショー

トラックバック-1件

  1. 映画感想 * FRAGILE

    ブリッツ/警官殺し VS 暴力刑事 & ゲイ刑事…

    ブリッツBLITZ/監督:エリオット・レスター/2011年/イギリス 暴力刑事ジェイソン・ステイサムが、ゲイ刑事パディ・コンシダインと組むバディもの。 みんな大好きジェイソン・ステイサム主演映画です。 タイトルの「ブリッツ」はイサムさんの役名なんだろうなあと思っていましたら、違いました。イサムさん、ポスターで銃持っていますけれど、ほとんど撃ちませんよ。メインの武器はホッケースティックとか、バールのようなもの。 あらすじ:暴力刑事がゲイ刑事と組んで警官殺しを追います。 なにかと暴力で解決を図る困った刑…

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)