僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.

歴史の重みを受け止める若手俳優たちの熱演が胸を打つ爽やかな青春映画

 NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』などで人気上昇中の向井理初主演作品。自分探しをする大学生が、偶然目にとめた海外支援のパンフレットに影響されて、カンボジアの小学校建設資金を集めるために奔走する。主演の向井理に加え、脇を固める松坂桃李、窪田正孝、柄本祐という売出し中の若手俳優たちの姿が登場人物に重なり、鮮烈な印象を残す爽やかな映画である。

 青春ものの王道をゆく物語に、売出し中の若手俳優を揃えたキャスティング。並みの青春映画に終わっても不思議ではない作品を、これほど魅力的なものにしたのは、ひとえに深作健太監督やプロデューサーを始めとした作り手たちの作品に賭ける真剣な想いだろう。中でも目を引くのは、それぞれの役を演じる俳優たちの生き生きとした姿である。

 大きなポイントとなっているのは、登場人物たちがカンボジアを訪れ、ポル・ポト時代の圧政の歴史を学ぶ中盤。この場面は手持ちカメラを利用したセミ・ドキュメンタリー形式で、俳優たちが実際にその場で見聞きする姿を捉える。見ているこちらもその事実の重さに言葉を失う程で、作品から受ける感情の動きがこの場面に大きく左右されていることは間違いない。しかし、その重さは見ている我々以上に、俳優たちに大きな影響を与えたようだ。事実の重みをしっかり受け止めて、スクリーンの中で必死に役を演じるその一途な姿には、素直に胸を打たれる。まるで、俳優たちの成長ドキュメンタリーを見ているような気になってくる。特に注目したいのが、向井理。テレビ番組でカンボジアを訪れた経験から、人一倍の思い入れを持っていたという彼は、“二枚目俳優”の看板をかなぐり捨てる熱演を披露。撮影終盤にカンボジアで収録されたというクライマックスシーンの表情は、冒頭で見せるぼんやりした顔つきとは一変。その表情からは、向井理という1人の人間が得た達成感が手に取るように伝わってくる。

 映画としては所々に粗さが残るものの、物事に対して真剣に取り組むことが、どれほど人の心を動かすかということを、改めて教えられた。THE BLUE HEARTSの『青空』も効果的に使われており、見終わった後、思わず口ずさみたくなる…そんな清々しさの残る、気持ちの良い映画だ。

Text by いの
オススメ度★★★★☆
原作:葉田甲太
監督:深作健太
出演:向井理、松坂桃李、柄本祐、窪田正孝
2011年 日本 126分
配給:東映
2011年9月 全国ロードショー
公式サイト:http://www.boku-seka.com/
(C)2011「僕たち」フィルムパートナーズ

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)