ワース 命の値段

命の価値って、どうやって決めるの?

これは実際にアメリカであった話である。
9.11同時多発テロの後、被害者の遺族は政府から補償金を受け取れることになった。ただ、人によってその金額は異なり、物議を醸していく。

命の値段は、その分野を専門とする弁護士ケン・ファインバーグによる計算式で決まるわけだが、「あなたが受け取れる金額は◯◯です」と告げられた遺族は、その一方的な判断に対し、モーレツに反発していく。

遺族の反発はもっともである。とはいえ、計算式でも使って処理しないと拉致があかないのも事実である。そもそもが無理難題な話ではあるのだが、この負け知らずの弁護士は、大統領からの依頼ということで、愛国心もあいまって重職を快諾してしまう。完璧にやろうとすればするほど嫌われ、完全に空回り。今まで味わったことのない屈辱と難題を前にして、彼はどのように苦境と向き合っていくのか。

ケンの前に立ちはだかるのは、敵方のリーダーを務めるチャールズ・ウルフ、この物語のキーパーソンである。懐の深さを感じさせる人柄で、ケンのやり方に反発している人々をまとめて人望を集めている。
彼が投げかける意味深な言葉が、ケンを少しずつ改心させていくのだが、本作は全編を通してセリフのひとつひとつに味わいがある。

負け知らずの人間が負け方を知った時、本当の意味で無敵になっていくのだと感じさせられ、9.11後の知られざる事実はもとより、人間ドラマとしても見応えがある。

ちなみにケンのモデルになった弁護士は、無報酬でこのとてつもない仕事を請け負ったという。憎まれ役で気の毒に思うが、慈悲の心がなければ到底できない仕事だ。

2月23日(木・祝)、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
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