【FILMeX】シャドウプレイ(特別招待作品)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

© DREAM FACTORY, Travis Wei

市当局の再開発事業の責任者の死の謎を追う刑事が何者かの圧力でその任を解かれる。香港に逃れた刑事は、その謎の鍵を握る若い女性と恋に落ちるが……。中国と香港、台湾にまたがる疑惑をスタイリッシュな映像で描くミステリー。ベルリン映画祭パノラマ部門で上映。(公式サイトより)

クロスレビュー

藤澤貞彦/危ういミステリー度:★★★★☆

高層ビルに周囲をぐるりと囲まれた、古くてみすぼらしく小さなビル群が、時代に取り残されたかのように塊となって存在する風景に圧倒された。この物語自体は、80年代の改革開放路線の始まりから現代までが時代背景となっているが、広州の冼村というこの場所は、紛れもなく現代の中国である。この風景自体が、貧富の差が激しく、都会と地方、強者と弱者が完全に分断された中国の現在を象徴している。カメラが目まぐるしく移動していく。息もつかせぬようなスピード感である。80年代から現代まで、スピードを出して走り抜けた登場人物たちの人生そのものを、そのまま映し出したかのようにも見える。官と民に分かれた旧友たちの、1人の女性を分け合った三角関係は、2人の間で汚職をし危ない橋を渡り続けた、その不安定さとも繋がっている。それは30年間豊かさを追い求めて、急激に成長を続けた中国の危うさをも象徴しているかのようであった。

外山香織/検閲前の作品も観たい度:★★★★★

2013年に実際に起こった汚職事件を元にしたクライムサスペンス。事件を追う若き刑事が過去を探る設定で、80年代からおよそ30年のスパンの出来事が描かれているが、時間軸の入れ替わりが激しくシームレスで別の年代に移っていくので、気を抜いていると置いていかれる。しかも映像の違いは明白ではなく、どれも現代のようであり過去のようでもある。それは、都会の中に取り残された再開発問題に揺れる村に象徴されているように思う。富と貧困、過去と現在の混在、経済成長の名の下に行われた施策の光と影。登場人物たちもまた表と裏の顔を持ち、権力の腐敗、暴力、詐欺、裏切り……と、どんどん負のスパイラルに陥るのだが、悲しい純愛ドラマを見ているような心持ちにもなる。役者陣が男女ともに美しく映像に映えるのも魅力。2年に亘る検閲、カットされた映像も多々あるとのことで元々はどんな作品だったのか気になる。


▼第20回東京フィルメックス▼
期間:2019年11月23日(土)〜12月1日(日)
【メイン会場】有楽町朝日ホール(有楽町マリオン)11/23(土)〜12/1(日)
【レイトショー会場】TOHOシネマズ日比谷11/23(土)〜12/1(日)
【映画の時間プラス会場】ヒューマントラストシネマ有楽町 (11/23(土)のみ)
主催:認定NPO法人東京フィルメックス
共催:朝日新聞社
公式サイト https://filmex.jp/2019/

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