ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男

両極の2大スターが繰り広げる壮絶な精神戦

この夏、甲子園の盛り上がりもスゴかったが、テニスにも語り継がれる伝説の熱闘があった。38年前のウィンブルドン。5連覇がかかったスウェーデンの美しき王者ボルグと、アメリカの狂犬マッケンローによる頂上決戦である。コートでは絶対に心の内を見せない冷静沈着なボルグと、苛立ちを隠すことなく観客や審判に吠えまくるマッケンロー。両極ともいえるプレイスタイルの2人が、4時間弱にわたってどっぷりと向き合い、壮絶な精神戦を繰り広げる。

テニスはメンタルの勝負といわれている。当然、決勝戦は熾烈で、まるで拷問のよう。映画では試合のハイライトとともに、絶えず変わり続ける両者の感情のうねりと、いかにして弱さと向き合ってきたかという道のりをクロスさせながら、その実像に迫っていく。コート外でのボルグは異常なまでに神経質で、感情をコントロールすることに大変な苦労をしていたり、一方でやりたい放題にみえる悪童マッケンローが、「実はすべて計算してやってるのでは?」と思わせる緻密な頭脳と繊細な感情を持ち合わせていたり、意外な面も見えてくる。真逆のようにみえる2人だが、表の顔と裏の顔が逆なだけで、極限まで追い詰められた者同士にしかわかりえない気持ちを共有していく。

驚きなのは主演俳優ふたりの演技力である。単なるモノマネではなく、その強烈なキャラクターを完全に自分のモノにしていて心揺さぶられる。本作の試写イベントでゲスト登壇した松岡修造氏も「(スベリル・グドナソン演じる)ボルグはボルグそのものだ」と絶賛しているし、シャイア・ラブーフによるマッケンローも愛さずにはいられないほど魅力的だ。彼にとってマッケンローほどのハマリ役があるだろうか。完全に自らのキャラクターイメージを逆手にとっていて人間味にあふれている。しかも、ボルグの幼少期を演じているのは、なんと本人の息子レオ・ボルグ(美少年)ときている!
すべてを賭けた熱い戦いを臨場感たっぷりに描いた本作、かなりオススメです。

8月31日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国順次公開

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