喜劇映画のビタミンPART5突貫レディ『臨時雇の娘』

愛する女優のために…喜劇映画の帝王が心を込めて捧げた映画

タイトル7月22日(土)お茶の水のエスパス・ビブリオにて、喜劇映画のビタミンPART5として、生演奏&パフォーマンス付き無声映画上映会が行われた。出演者は、活弁に山崎バニラさん、演奏に坂本真理さん、そして解説は喜劇映画研究会の新野敏也さん。今回は、新野さんのトリビア解説を中心に、その模様をお伝えします。



上映作品『臨時雇の娘』ポスター
【ストーリー】
「喜劇映画を発明した男」と呼ばれる名プロデューサー、マック・セネットと、映画界初のコメディエンヌ、メーベル・ノーマンドが組んだ長編作品。メーベル扮するスーは女優に憧れハリウッドへ。しかし別の写真を送っていたため衣装係として働くことに。馬車の追っかけや、撮影スタジオでライオンが巻き起こす騒動などのスラップスティック・コメディはもちろん、詐欺師とのスリリングな駆け引き、幼なじみとのラブ・ストーリーなど見どころ満載のメロドラマ。最後にスーが選んだ道とは…。



山崎バニラさん

山崎バニラさん

山崎バニラさん「私はいつも弾き語りで活弁しているのですけれども、なんと16年ぶりに生演奏で活弁させていただくことになって、本当に真理さんの演奏を楽しみにしています。よろしくお願いします」

坂本真理さん「私は誰かと思っている方もいらっしゃるかと思いますが、私はリトミシャンです。リトミックをずっとやってきています。職業としては幼稚園園長を経て、今は音楽教室を経営しております。鍵盤を弾いてということが、今回3回目なので、今経験を積んでいるところです。皆さん育ててください。よろしくお願いします」

山崎バニラさん「なので私は今、育児相談に乗ってもらっています」

新野敏也さん

新野敏也さん

お2人の明るく元気な声で始まった上映会。「喜劇映画のビタミン」は、今年で3年目5回目になるという。これまでは映画の歴史や演出について、谷川賢作さん(音楽家「その時歴史が動いた」の作曲など)と新野さんがコンビで解説していたのだそうだが、「暑いときにむさくるしいおっさん2人でというのはなんですので」ということで?今回の企画になったという。題して「突貫レディ」作品はメーベル・ノーマンド主演『臨時雇の娘』。作品自体、喜劇映画研究会所蔵の貴重な映像コレクションからのもので、希少価値が高いものである。この作品は、20年前に新野さんが、フィルムを断片的に揃え、ネガの欠落部分(破損していたカット)をデジタル処理で補修した後、もう1度35mmネガを作成しプリントし直したものとのこと。(当時は映画関係の人でもあまりやっていなかったことだそう)今回は、それを改めてデジタル修復し直しての上映となる。

坂本真理さんとバニラさん

坂本真理さんとバニラさん

かつてサイレント映画の全盛期には、活弁と演奏者は敵対関係にあったという。活弁自体がリズミカルなものであったため、演奏者とぶつかってしまったためだ。今回の山崎バニラさんと坂本真理さんのコンビは、そんな歴史があったなんてことが想像できないほど、息がピッタリ。坂本さんの演奏は、画面によく合い、ライオンの啼き声や銃声など様々な工夫を凝らした効果音も動きに見事にシンクロしていて、画面から音が出ているのかと、一瞬錯覚してしまうほど。さらには、途中お2人が歌をハモーニーする場面もあり、素敵だった。バニラさんの活弁は、会話の場面はあくまでも自然に。でも時に「お父さん、あの人の声がいやです」「そりゃ、活弁の声が変だから仕方ないだろう」と、自分への突っ込みが入ったり、「それにしても後ろのおじさん、いくらなんでもはしゃぎすぎです」と、傍役への突っ込みが入ったりと、それがいかにも現代風で、とにかく楽しい。

坂本真理さん

楽器について説明する坂本さん

山崎バニラさん「真理さんは、割と即興で弾かれるタイプの方で、もう今まで聴いたことがないような音楽がいっぱい聴けて、私は本当に感動しました」

坂本真理さん「リハーサルでは、毎回違うんで。バニラさんもそれに段々慣れてこられて、今日の曲はこうでしたねっておっしゃってくださって。バニラさんとのやり取りで、本当に成長させていただきました」

山崎バニラさん「すごいですね、楽器も色々あって。オルゴールの音は、最後のシーンのために、真理さんがカードに穴を開けて、全部自分で作ったんですよ」

坂本真理さん「これは、オルガニート(オルガニータ)といって、手回しオルゴールのための楽譜を自分で起こして、穴を空けたんです。カードは通販で10枚セット1200円で、それだけで売っているのですよ」

▼坂本真理さんの詳しい音楽解説は、こちらでご覧になれます
かれいどすこーぷ「臨時雇の娘 音楽解説」
http://murasaki-kaleido.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/post-1.html

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