メッセージ

映画と。ライターによるクロスレビューです。

【作品紹介】

SF映画の金字塔『ブレードランナー』の続編の監督に抜擢されたことでも注目の、『プリズナーズ』『ボーダーライン』などで独特の映像美と世界観が高く評価されているドゥニ・ヴィルヌーヴ。彼の最新作『メッセージ』は、優れたSF作品に贈られるネビュラ賞を受賞したアメリカ人作家テッド・チャンによる小説「あなたの人生の物語」を原作に映画化された、全く新しいSF映画。第89回アカデミー賞では音響編集賞を受賞した。
謎の知的生命体と意志の疎通をはかろうとする言語学者のルイーズ役には、『アメリカン・ハッスル』を含め5度アカデミー賞にノミネートされたエイミー・アダムス。彼女とチームを組む物理学者イアンには『ハート・ロッカー』など2度アカデミー賞にノミネートされたジェレミー・レナー。軍のウェバー大佐役には『ラストキング・オブ・スコットランド』の演技でアカデミー賞主演男優賞を受賞したフォレスト・ウィテカーが扮している。

【クロスレビュー】

外山香織/誰かと語り合いたいと思う度:★★★★★

壮大な風景と音楽にも魅了されるが、なにより注目すべきは「ヘプタポッド」と名付けられた7本足のエイリアンの言語。タコの吐く墨のような円形の文字、それを解読する言語学者ルイーズの「思考は言語によって規定される」。扱う言語を変えれば思考が変わるというのはとても面白い発見だった。そして彼らがなぜ地球にやって来たのかという理由がまた良い。人類とエイリアンとのセッションというSFの大きなテーマが、すとんとパーソナルな結末に落ちる心地よさ。原作のタイトルが「あなたの人生の物語」だから納得だ。ルイーズの最後の決断については、観た者それぞれが自問するだろう。幸福とは何なのか。時間とは何なのか……。毎度のことながらドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画は観た後の心の中がぐるぐると渦巻いて、いつも誰かと語り合いたくなる。監督の『ブレードランナー』続編もますます楽しみだ。

鈴木こより/コミュニケーションの本質について考えさせられる度:★★★★★

‪観た直後は、痺れるような余韻と疑問で、何から語ったら良いかわからなかった。いろんな切り口で語れる懐の深い作品だけど、強く感じたのは、コミュニケーションの本質を説いた深遠な物語だということ。言語学者のヒロインは、突如地球に舞い降りたエイリアンとコンタクトを取るよう、軍から命じられる。むろん、なぜ来たのかを探るためであるが、そのプロセスが面白い。ヒロインがヘルメットを外して対面するシーンに象徴されるように、テクノロジーだけに頼らない”対話”がキーとなっており、今の時代、軽視され失われつつあるアプローチが、膠着状態の打破に一役買っている。金属的ではないヴィジュアルも、鼓動のようなサウンドもどこか原始的で、近未来的なイメージからあえて距離を置いたようなデザインが印象的。メッセージの伝え方が多元的で、目にも耳にも、脳にも心にも響いてくる稀有な映像体験だった。‬


2017年 TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー

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