「ハーモニー 心をつなぐ歌」受刑者の心を支える音楽とは
韓国で「300万人が涙した」という、女子刑務所で結成された実在の合唱団をモデルに膨らませた物語。おなかの子供を庇うために殺人を犯してしまったジョンヘ(キム・ユンジン)は、刑期中に男児を出産、育児を許される18か月まで一緒に過ごすことになる。そんな折、刑務所へ慰問に訪れた女声コーラスの歌に感動したジョンヘは、自分たちも合唱をやろうと動き出す。
厳しい刑務所生活と思いきや、映画で描かれる描写は何ともコミカルで、まるで女子の寄宿学校のようなノリだ。映画「天使にラブ・ソングを…」を思い起こす人もいるかもしれない。しかも、合唱団を作ろうとメンバーを募り始めたジョンヘ自身は音痴と言う設定。そして何とか集ったクセ者ぞろいのメンバーを指導するのが、かつて音大の教授だったと言う死刑囚ムノク(ナ・ムニ)だ。
ストーリーそのものはベタだし展開も予想もつくのだが…それでも泣けてしまうのは何故なのだろう。受刑者はそれぞれに罪を背負っている。主人公は愛息と共に生きられない運命だ。家族と縁が切れてしまった受刑者もいる。皆何かを手放しあきらめながらも、償い生きていかねばならない。そこに至るまでの覚悟は、容易ではない。そのとき、何が魂を支えてくれるのだろうか? 人が悩んだり迷ったりするときに、音楽のフレーズや、一遍の詩が力づけてくることがあるように思う。仲間と共に歌うコーラスはさらにその力を倍増させてくれる。私自身もコーラスをやっているが、ベートーヴェンの「第九」合唱などを歌うときは、音楽の威力を肌で感じる。
まあ、映画ではコーラスそのものは吹き替えなので、歌を期待するとちょっとがっかりしてしまうが、それでも「歌が心をつなぐ」と言うテーマは十分に描かれていると言えるだろう。
さらに本作の結末は、明るい導入部分から一転、いろいろ考えさせられる幕引きとなっていることも特徴。単なる感動ドラマやファンタジーではなく、受刑者の背負う重い枷を描いたところに、製作陣の気概を感じるところだ。
Text by 外山 香織
オススメ度★★★☆☆
製作国:韓国 製作年:2010年
監督・脚本:カン・テギュ
出演:キム・ユンジン、ナ・ムニ、カン・イェウォン
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2011年1月30日
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