【TNLF】ガールズ・ロスト
作品紹介
一晩だけ少女を少年に変える力を持つ不思議な花を手に入れたキム、モモ、ベラ。魔法を無邪気に楽しむ3人だったが、やがてキムはふたりに隠れて少年になっては、不良のトニーとつるむようになり…。ファンタスティックな設定と幻想的な映像で、少女たちの自己認識の葛藤とジェンダーの揺らぎを描き出した青春ドラマ。(公式サイトより)
クロスレビュー
藤澤貞彦/僕たち女の子、君たち男の子度:★★★★☆
自分が本当の自分じゃないような気がする。14歳の少女キムの場合は、男の子が自分の中にいるということだった。魂を意味する黒い蝶に誘われて温室の中に入ってみると、そこには一晩だけ男の子になれる黒い魔法の花が、蜜を滴らせながら咲き誇っていた。仲良し3人組の女子が男の子に変わった後が、まったく違和感がない。雰囲気の似た子をよく探してきたものと思う。ボーイッシュな主人公のキムが男の子になると、やっぱり中性的な感じになるのも面白い。そもそもキムという名前自体が、男性でも女性でも使えるものなのである。最初の一晩は、ただただ楽しさだけが勝っていた。しかし回を重ねるごとに苦悩のほうが増していく。友情にもヒビが入り始める。また、キムは男の子の姿になっても、男の子のことが好きになってしまうという倒錯を抱えてしまう。心と体の性が一致しないだけではなかったのである。一口にLGBTといっても、そこには多様性があるのだ。そうではない人にとってはわかりにくいその気持ちを、この作品はファンタジーを使い、かつ青春映画の要素をたっぷりと詰め込んで、誰にでもわかるように表現している点が見事である。
鈴木こより/こんな蜜なら一度試してみたい度:★★★★☆
仮面や妖しげな花の蜜という意味深なアイコンが、別世界へ誘ってくれる。別世界とは3人の少女たちの内面世界だ。男の子に憧れ、そうなりたいと思う女の子、男の子になって好きな女の子を振り向かせたい女の子、男子のセクハラから解放されたい女の子。この少女らは仲良しで「レズ」扱いされているけど、異性になりたい理由は三者三様だ。彼女たちは男の子に変身できる花の蜜を手に入れることになるが、変身前の女の子と変身後の男の子がそれぞれ激似で、キャスティングの精度に思わず感心してしまう。だけどテーマはトランスジェンダー云々ではなく、本当の自分を受け入れることの難しさを語っているのだと思う。容姿や性格など理想と違う自分、他人と違う自分、それを隠そうとすることへの罪悪感。思春期の少女にとってそれは大きな問題であり、簡単に開き直れるものではない。とはいえ、現実には変身できる蜜なんて存在しない。蜜を飲みすぎて自分がますますわからなくなってしまった少女の、本当の葛藤はこれからだ。
トーキョーノーザンライツフェスティバル 2017開催概要
映画祭会期:2017年2月11日(土)~2月17日(金)
会場:ユーロスペース
イベント会期:2017年1月21日(土)~2月19日(日)
主催: トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
公式サイト:http://tnlf.jp/(映画祭以外にもイベントが盛りだくさん。詳しくはこちらから)
※1/21(土)のオープニングイベントではラース・フォン・トリアーの「キングダム」イッキミ!を開催するほか、切り絵作家アグネータ・フロック展やアイスランド写真展、音楽イベントなど盛りだくさん。来日ミュージシャンによる伴奏付きサイレント映画の上映も!
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※前売り券はe+(イープラス)のWEBサイトにて販売中。前売り券は作品、日時指定でご購入いただけます。全席自由席、各回入れ替え制で、上映開始10分前から整理番号順のご入場となります 。整理番号をご確認の上、必ず開場時間までにお越しください。