【FILMeX】マンダレーへの道(コンペティション)

より良い生活を夢見た若者たちの結末は・・・

fc04main昨日11月26日に発表された中華圏のアカデミー賞といわれる台湾金馬奨。惜しくも無冠に終わったものの、注目を集めていた作品が、コンペティション部門に出品された『マンダレーへの道』だった。作品の評価が高かったのはもちろん、2014年に大麻使用が発覚し、活動を休止していた主演の柯震東(クー・チェンドン)が主演男優賞候補に挙がっていたことも大きな理由。アイドル的な人気を博してた過去の華やかなイメージを捨て、肉体労働に明け暮れる中華系ミャンマー人の若者になりきった熱演が高く評価された。

 そんなクーが演じる主人公は、ミャンマーからタイへ違法越境する少年グオ。道中、同じ越境者の少女リェンチンと出会い、心引かれる。グオはお金を貯めてミャンマーへ戻り、自分の店を持ちたいと望んでいるが、リェンチンはより良い生活を求め、さらに台湾へ渡りたいと夢見ている。そのためには、何としても労働許可証を手に入れ、都会で賃金の良い仕事に就かなければならない。許可証取得に躍起になるリェンチンと、グオの間には大きな価値観の溝があり、やがて物語は思いもよらない展開をみせる。

 とにかく、この少年少女が最初から危なっかしい。しかも2人の置かれる環境は劣悪で、観ているとどんどん沈んだ気持ちになっていくのだが、懸命な彼らの行く末を見届けたいという思いに引っ張られ、気がつけばのめりこんで観てしまうという力作。ミャンマー出身で、台湾で活躍するミディ・ジー監督が、親族の実体験と、実際にタイへ出稼ぎに行った男女に起こった事件をベースに撮りあげた。自身も10代で台湾に移り住み、学費や生活費を稼ぐために低賃金のキツいアルバイトに明け暮れた経験があるようで、出稼ぎ労働者の描写は真に迫っている。

 クーとリェンチン役の呉可煕(ウー・クーシー)は、実際にミャンマーとタイに赴き、肉体労働の体験や言葉の習得など、準備におよそ1年をかけたという。クーにとっては、まさに芸能界を干されていたからこそめぐり逢えた良作。俳優としての彼の素質にラブコールを送る監督は数多く、大きくつまずいて一皮むけて戻ってきたクーの今後の活躍を期待したい。


▼第17回東京フィルメックス▼
期間:2016年11月19日(土)〜11月27日(日)
場所:有楽町朝日ホール・TOHOシネマズ日劇
公式サイト:http://filmex.net/2016/

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)