【スウェーデン映画祭】波紋

映画と。ライターによるクロスレビューです。

【作品紹介】

波紋ガールフレンド殺害の罪で服役していた17 歳のヨンは、出所後に地元へと戻るが、復学した学校ではすぐに執拗な嫌がらせが始まる。町の人々は彼の過ちを忘れてはいないのだった。少年犯罪のその後を 描いたダークな青春ドラマ。再生を求めながらもそれを赦さない周囲との軋轢の中でもがく主人公を人気ミュージシャン、ウルリック・マンターが演じる。ホー ン監督はカンヌ国際映画祭監督週間で鮮烈な長編デビューを果たした。(公式ページより)
マグヌス・フォン・ホーン監督は、短編時代にも、友達を殺してしまったティーンエイジャーの男の子2人が、警察の心理学者に助けられながら、その罪の大き さを自覚していくドラマ『Echo』(08)や、学校でいじめられる16歳の少年たちを描いた『Utan snö』(11)など、ティーンエイジャーの犯罪、暴力、孤独、苦悩を描いている。
2016ゴールデン・ビートル賞 作品賞、監督賞、助演男優賞

【クロスレビュー】

藤澤貞彦/感情の持っていき場がない度:★★★★☆

最初は、なぜこの少年が殺人を犯したのかという思いがした。しかしその後、物語は彼に寄り添って進んでいくというのに、彼は観客を拒絶する。というのも、彼の中に得体のしれない何かが隠されているからだ。例えば留守を狙い、殺した少女の部屋に忍び込むという行為には、偏執狂的な臭いがしてしまうし、彼の祖父と犬を安楽死させるシーンにも、ぞっとするような冷たさを感じてしまう。そもそも元々通っていた学校に復学させたこと自体が間違いなのである。被害者の母親が苦悩することは目に見えている。しかもここは田舎である。噂や偏見がさらなる恐怖を生みだし、暴力に繋がっていく。結果的に少年は、村に現れた悪魔のごとく、何もせずして村の平和を乱していく。ここにいる限り少年は更生どころか、さらに病んでいくであろうし、家族は早晩崩壊するだろう。更生とは綺麗事ではない。それを言っている限り、更生施設も、学校も結局は役に立たない。少年はバイクでどこに向かうのだろう・・・。これは1つの問題提起である。

鈴木こより/少年とはいえ殺人で服役2年は軽すぎる!度:★★★★☆

17歳のヨンは一見普通の静かな青年で、出所後もこれまで通っていた高校に通い、元の暮らしに戻ろうとしている。母はいないけれど父と弟も自然に振舞い、懸命に彼を受け入れようとする。だけど罪は殺人。世間はそうはいかない。ヨンが町に戻ったことで、彼の周辺がザワつき始める。学校では当然孤立し、飼っている犬には毒を盛られる。けれど、彼が犯した罪を考えれば想定内の反応と言えるかもしれない。問題はヨン本人がゾッとするほど他人の感情に”鈍い”こと。それに罪の重さを実感するのに服役2年は不充分なのでは、と思う。更生も大事だけれど、本人が充分に反省していなければ意味がないだろう。ヨンと関わっている父や弟らまともな人間が少しずつ壊れていく描写がじわじわとリアルで恐ろしかった。


【スウェーデン映画祭 2016開催概要】

上映時間等詳細は公式サイトでご確認下さい。
ポスター
■開催期間:2016年9月17日(土)〜9月23日(金)
■場所:ユーロスペース(渋谷区円山町1−5)
■主催:スウェーデン映画祭実行委員会
■公式WEBサイト:http://sff-web.jp/
【ご注意】
前売り券は、全ての作品共通の鑑賞券となりますので、前売り券をお持ちの方は、ご来場当日に入場整理券(番号)への引き換えが必要となります。
入場整理券は、当日の午前10時30分から劇場窓口にて引き換えいたします。
前売り券の有無や購入日は入場整理番号には影響いたしません。
※前売り券は3回券のみの販売になります。また、上映日時や座席の指定はできません。
※上映開始10分前より整理番号順にてご入場いただきます。
※満席になりますと、前売り券をお持ちでもご入場いただけませんのでご注意ください。

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)