【スウェーデン映画祭】ヤング・ソフィー・ベル ： 映画と。

高校の卒業式、2人だけ、まるで夏至祭の衣裳のように華やかな格好をして、記念写真に仲良く収まった女子生徒がいた。アリスとソフィー・ベル。2人は幼い時から、まるで姉妹のようにして育ってきた親友同士。高校卒業後、2人はベルリンで暮らすことを夢見ていたのだが、アリスだけが突然ひとり旅立ち、ソフィーは１人取り残されるのだった。アリスに何があったのか。ソフィーは、答を見つけるため、彼女の辿った道を求めてベルリンに赴くのだった。

確かにスウェーデンの学校制度は、大学まで学費は無料ではある。しかし、それは教材費がかからないということまでは意味しないし、学力の差、得意分野の違いによって、例え幼馴染みであっても、高校卒業後は別々の進路になってしまうのは、当たり前のことである。北欧では高校を卒業した後、ギャップイヤーといって、次の進路を決めるまでの半年間から1年間ほど、海外でアルバイトをしながら暮らすといったことがよくあり、アリスは、そういう名目でならソフィーとこれからも一緒にいられると、考えたのだろう。しかし、ソフィーはまだ本気でベルリンに行こうとは考えていない。そのギャップが2人の明暗を分ける。卒業式の日、海辺でクラスメイトたちが名残を惜しんで騒いでいる中で、アリスは、とびきりはしゃいでいる。１人服を脱ぎ捨て海に入っていく彼女を見て、同級生は「彼女はイカレてるね」とそれを評する。ところがアリスははしゃぎながらも、ボーイフレンドと並んで語りあうソフィーに、常に視線を向けている。その表情はどこか寂しそうなのだが、ソフィーはそれに気が付くことがない。

アリスはなぜ怒って、ソフィーを残して旅立ってしまったのか。なぜ電話にも出ようとしないのか。彼女のアリスを探す旅は、その理由を知ることであり、それはイコール自分が何者かを、発見することでもある。

アリスという名前は、そもそも北欧圏の名前ではなく、英語圏の名前である。彼女の父親がアメリカ人であることと、それは関係している。アリスの家は母1人子1人の母子家庭。父親は、妻子を残してアメリカに帰ってしまったようだ。母親が常に働きに出ているため、彼女は隣近所のソフィーの家にいつも預けられ、それで2人はいつも一緒にいたのである。アリスはソフィーのことをいつも本名でなく、ソフィー・ベルと呼んでいる。“ベル”とはサザン・ベルの“ベル”であり、『美女と野獣』のヒロインの名前の“ベル”から来ている。フランス語の美女というのが元々の意味。ソフィーが美人であるということも確かにあるのだが、そこには、あたかも『風と共に去りぬ』で、アイリッシュのスカーレットが、フランス系のサザン・ベル、メラニーに抱いていたような、複雑な気持ちも混じっていたことが、推測できる。子供の時から、分け隔てなく、家族のように接してくれソフィーとその家族たち。しかし、アリスはどこかで、その家庭環境を羨ましく思い、時に自分に対して無神経な振る舞いをするソフィーに、愛情だけでなく嫉妬の心を抱えていたのではなかろうか。そういう意味で、常日頃ソフィーが、なぜアリスが自分のことをソフィー・ベルと呼ぶのかわからないと言っていたことは、とても象徴的である。彼女はベルリンで、そのことの意味を初めて発見することになるのである。

アリスとソフィー・ベル。アリスはソフィーの優雅さに憧れ嫉妬していた。ソフィーは、アリスの奔放さに惹かれつつも、恐れていた。ソフィーはベルリンで、自分の中にもアリスがいることを発見する。しかし、その時はもうすでに遅い。スウェーデンが最も美しい季節、夏はとても短いのだ。まるで夏のようでもあった2人の思い出を、その秘密を、ソフィーは、押し花のノートに夏を閉じ込めるかのように、そっと1人埋める。家庭環境や、個人の資質の違いから、幼馴染みであっても、いつかは別の人生を歩んでいかなくてはならない。アリスの不幸は、2人がもうその時に来ていることをソフィーが気付けなかったことであり、アリス自身が、それをわかりながらも自身で克服していけなかったところにある。人生の残酷さをそこに見たような気がした。

【スウェーデン映画祭 2016開催概要】

上映時間等詳細は公式サイトでご確認下さい。

■開催期間:2016年9月17日(土)〜9月23日(金)
■場所：ユーロスペース(渋谷区円山町１−５)
■主催：スウェーデン映画祭実行委員会
■公式WEBサイト：http://sff-web.jp/
【ご注意】
前売り券は、全ての作品共通の鑑賞券となりますので、前売り券をお持ちの方は、ご来場当日に入場整理券（番号）への引き換えが必要となります。
入場整理券は、当日の午前10時30分から劇場窓口にて引き換えいたします。
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※前売り券は3回券のみの販売になります。また、上映日時や座席の指定はできません。
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