『リザとキツネと恋する死者たち』ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ監督インタビュー

日本オタクのハンガリー人監督が贈る、摩訶不思議なファンタジー

-ハンガリーでは今、どのような映画が好まれるのでしょう?

Liza_sub2監督:ハンガリー映画には両極端な傾向があります。1つは、すごく軽いタッチのエンターテインメント性の高い楽しい作品。もう一方は、国際的な映画祭で高く評価される非常にアーティスティックで重々しい作品。タル・ベーラなどが代表ですね。今回の私の映画は、そのどちらでもないところを目指して成功したと思っています。オーディエンスが楽しめるエンターテインメント性がありつつも、メッセージも含んでいる。ハンガリー映画としては非常にユニークな存在だと思います。実は興行的にここまで成功したことは驚かれているんです。ハンガリーの出資者たちが期待していた数字の6倍稼ぎましたから。

-今後撮りたいものや、映画監督として目指す方向性を教えて下さい。

監督:エンターテインメントでありつつ、メッセージ性のある作品を撮っていきたいです。動き始めているプロジェクトが2つあって、1つはテレビドラマのシリーズ。家庭内暴力を扱っているクライムストーリーです。ヘヴィーな題材なのですが、女性たちが暴力を受けたり、プレッシャーに晒されたときに何ができるか?ということを探っていくドラマです。もう1つは長編劇映画で、現在のブダペストを舞台にした連続複数殺人犯の話です。今日のブダペストの様子を正確に写し取りつつ、でもクライムストーリーとしては非常にクレバーで、かつ娯楽的側面もあります。ただ、政治的なメッセージも含んでいるため、資金繰りが上手くいくかどうかの不安はありますが、『リザ〜』が成功したことをハンガリーの出資者たちは喜んでいますので、今、企画を出して返事を待っているところです。

Liza_sub4

Profile
1968年ハンガリー生まれ。同国で最も忙しいCMディレクターの1人であり、過去11年間で150本を超えるCMを監督。そのかたわら、10本の短編映画を監督し、国内外の34の短編映画祭で上映されて11の賞を獲得している。『リザとキツネと恋する死者たち』が初の長編映画となる。


〈取材後記〉
一体どんな弾けた人物が現れるか…と、お会いする前から興味しかなかった今回の取材。大好きだというジブリ作品の「トトロ」にも似たおおらかな風貌はイメージどおりだったのだが、作品に込めた思いや分析は意外とクール。さすが売れっ子CMディレクター。ただのオタクではない、仕事人の腕と社会派の一面もうかがえた。ただ、ほとんどついて行けない筆者や周囲の関係者を置いてけぼりにし、偏愛するJ-POPに関して綿綿と語り続ける姿は、オタク以外の何者でもなかったけれど。


『リザとキツネと恋する死者たち』
監督・脚本:ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ
英題: Liza, The Fox-Fairy
出演:モーニカ・ヴァルシャイ、デヴィッド・サクライ
配給:33 BLOCKS(サンサンブロックス)
2014年/ハンガリー/98分

12月19日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
公式サイト:http://www.liza-koi.com/

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