ジュラシック・ワールド

何人食われようとも幾人踏みつけられようとも、人間がどんなに愚かしくても、太古のロマンに心ときめかさずにはいられない!

ILM / Universal Pictures and Amblin Entertainment

ILM / Universal Pictures and Amblin Entertainment

 ただ後から冷静に振り返ってみれば、過去にあれだけの悲劇を引き起こした施設だ。世間から徹底的に糾弾されてもおかしくはないのに、“過去の教訓を生かしつつ”規模を拡大し大盛況。さらに遺伝子操作で大型恐竜インドミナス・レックスをつくり出す。だがインドミナスは驚異的な知能を発揮してあっさり逃亡。施設内は再び、というより過去最悪の修羅場と化す。人間とはまさに喉元過ぎれば何とやらで、自然への敬意の喪失は必ずしっぺ返しがくることを忘れている。ハモンド氏の銅像とて、彼は恐竜への夢と愛情からの行動とはいえ、施設をつくろうとしたために、その結果として大惨事を引き起こしており(犠牲者の総計はどのくらいなのだろうか・・・)、その人物の銅像をよく立てたよな~と呆れもする。人間とはつくづく懲りない生き物であることが良く分かる。

 加えて登場人物の描写も、施設の責任者で利益至上主義を主張するクレア(ブライス・ダラス・ハワード)や小型の肉食恐竜ラプターを調教するオーウェン(クリス・プラット)、恐竜を見下しラプターの軍事利用を目論む軍人ホスキンス(ヴィンセント・ドノフリオ)など、はっきり言って薄っぺらい。ラストのオーウェンとクレアのシーンに至っては、あの状況であり得んだろう!バカか!とツッコミたくなる体たらく。まあ、そこに批判もあるだろうが、彼らの浅さはむしろ確信犯で、人間のアホっぷりを強調する役割を担っているように思う。そういう意味では俳優陣も奮闘しており、とりわけ高慢ちきな女を演じさせれば右に出る者はいないブライス・ダラス・ハワードがクレアに扮したのは、まさに適役だ。

 つまり本作は我々人間の愚かさや傲慢さに警告を発している。深読みすれば、それが裏テーマだ。だがそれでも、恐竜の大地を揺るがす咆哮には、否応なく胸が高鳴る。その魅力には抗いきれない。何人食われようとも幾人踏みつけられようとも、人間がどんなに愚かしくても、太古のロマンに心ときめかさずにはいられない。ここはもういっそ「バカでいいじゃん!」と開き直って、ロマンとスリル満載の125分に心を無にして身を投じていただきたい。

(余談)
 そういえば施設内にスターバックスが出店していたが、パーク限定マグカップが売っているのかな、だとしたら欲しい!・・・などとムダなことを考えるのも楽しいかも。

▼作品情報▼
監督:コリン・トレボロウ
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ヴィンセント・ドノフリオ、タイ・シンプキンス、ニック・ロビンソン、オマール・シー、B・D・ウォン、イルファーン・カーン
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、トーマス・タル
製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
キャラクター原案:マイケル・クライトン
原題:Jurassic World
配給:東宝東和
公式サイト:http://www.jurassicworld.jp
8月5日(水)より全国公開

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  1. 映画感想 * FRAGILE

    ジュラシック・ワールド/クレアから見たカレンのウザさ

    ジュラシック・ワールドJurassic World/監督:コリン・トレボロウ/2015年/アメリカ もしかして姉妹仲は相当悪いのではないだろうか。 新宿ピカデリー シアター2 E-14で鑑賞。2D字幕です。 あらすじ:恐竜がガオーで大変です。 ジュラシック・ワールドに行っといでって親から見送られた男の子ふたり。園内でなにかトラブルがあったみたいで避難しろって放送流れるんだけど、自分らVIP扱いだからちょっとくらい遅れてもいいやって探検しにいったら大変でした。※ストーリー上のネタバレはありません。 ク…

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