チャイルド44 森に消えた子供たち

映画と。ライターによるクロスレビューです

CH44_D45-13005.CR2

ロシアでは発禁本となった全世界震撼の問題作、遂に映画化!

2009年版「このミステリーがすごい!」海外編で第一位を獲得した、トム・ロブ・スミス原作のミステリー小説「チャイルド44」が名匠リドリー・スコットにより映画化。
1950年代、犯罪なき理想国家を掲げるスターリン体制下のソ連で起こった子供を狙った連続殺人事件。犯人を追う主人公が、真相に迫れば迫るほど国家に狙われ、敵と味方が一瞬で入れ替わるスリリングな展開は、一瞬たりとも目を離すことができない!

【ストーリー】
1953年、スターリン政権下のソ連で、子供たちの変死体が次々と発見される。年齢は9歳から14歳、現場は山間の線路沿い、全裸で胃は摘出され、死因は溺死。だが、“殺人は国家が掲げる思想に反する”ため、すべて事故として処理される。秘密警察の捜査官レオは親友の息子の死をきっかけに、事件解明に乗り出す。捜査が進むほどに、元同僚の秘密警察に追われ、さらに、愛する妻ライーサにも容疑がかけられる。真実が容易に歪められるこの国で、愛する者すべてを危険にさらしながら、レオは真犯人に辿り着けるのか──?

7月3日(金) TOHOシネマズ みゆき座他全国順次ロードショー


【クロスレビュー】
ミステリーの定義を「謎を解くこと」とすると、真実を知りたいと思うだけで自分の身が危険に晒される全体主義国家には、ミステリーは存在しえないということになる。存在しないものを追えば、当然犯人を追う側のほうが窮地に立たされてしまう。そこが異色である。ロシアの泥土の中でもがき闘う夫婦が印象的だが、ロシアにおける戦争、全体主義時代をその地の人々が思い起こす時、そこにはぬかるんだ泥の記憶が刻まれているのでは、と最近思う。『あの日の声を探して』『神々のたそがれ』もしかり。彼らが泥だらけになって闘い掴み取ったのは、土中の一粒のダイヤモンドのように光り輝く人間の尊厳。子供殺しという絶対悪以上に、国家システムに巣くう “悪”のほうに、より強く興味が向かうテイストが原作とは違う。これはいわばロシア版『殺人狂時代』。ロシア以外の国の人だからこそ作れる作品ではある。
(藤澤貞彦/★★★☆☆)

主演のトム・ハーディがハマり役。強面キャラでも“子犬っぽさ”は健在で、とくに姐さん系女優との相性はバツグン。本作では北欧系クールビューティー、ノオミ・ラパスとの夫婦役でその本領を発揮し、母性本能をくすぐりまくる。
彼が演じるレオは秘密警察のエリート捜査官。孤児から戦争の英雄となり、一見すると非情な男にも見えるのだが…じつはかなりの愛妻家。しかしその愛妻にスパイ容疑がかけられてから、彼の運命は狂い始めていく。ミステリアスな妻に翻弄されても、一夜にして味方(国家)に追われる身となっても、ズタボロになりながら連続殺人犯を執念で追い続ける。殺人捜査の行方とともに、この夫婦の行く末も気になるスリリングな物語である。
(鈴木こより/★★★★☆)

「楽園では殺人は起こりえない」という思想が貫かれたスターリン統制下のソ連。殺人が事故として処理され、罪が罪として問われず、魔女狩りが横行し、真実を探る者は排除される。やがて主人公の懸命な捜査で犯人が明らかになっても素性や犯行動機は問題視されず、「間違った社会が犯罪者を生み出す」というテーゼが再び突き付けられる。異様な方法で次々と子どもを殺す殺人鬼というネタだけでもサイコスリラー映画は出来てしまうが、本作で描かれる闇は1人の異常犯罪者の中にあるのではなく、凝り固まった思想が作り上げた盲目的な社会、組織の中にある。しかしながら、真に恐ろしいのは、心底愛して結婚した女から「本当は最初から愛してない」と告げられることではないだろうか、と思ってみたり。
(外山香織/★★★☆☆)


製作:リドリー・スコット
監督:ダニエル・エスピノーサ『デンジャラス・ラン』
脚本:リチャード・プライス『身代金』
原作:トム・ロブ・スミス「チャイルド 44」上下巻(新潮文庫刊)
出演:トム・ハーディ『インセプション』、ゲイリー・オールドマン 『裏切りのサーカス』、ノオミ・ラパス『プロメテウス』、ジョエル・キナマン『ロボコップ』、パディ・コンシダイン『ボーン・アルティメイタム』、ジェイソン・クラーク 『ゼロ・ダーク・サーティ』、ヴァンサン・カッセル『美女と野獣』
配給:ギャガ
公式サイト:http://child44.gaga.ne.jp/
(C)2015 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

トラックバック-1件

  1. チャイルド44 森に消えた子供たち映画と。 | 最新ニュース

    […] 2009年版「このミステリーがすごい!」海外編で第一位を獲得した、トム・ロブ・スミス原作のミステリー小説「チャイルド44」が名匠リドリー・スコットにより映画化。 真実が容易に歪められるこの国で、愛する者すべてを危険にさらしながら、レオは真犯人に辿り着けるのか──?【クロスレビュー】ミステリーの定義を「謎を解くこと」とすると、真実を知りたいと思うだけで自分の身が危険に晒される全体主義国家には、ミステリーは存在しえないということになる。 1950年代、犯罪なき理想国家を掲げるスターリン体制下のソ連で起こった子供を狙った連続殺人事件。 犯人を追う主人公が、真相に迫れば迫るほど国家に狙われ、敵と味方が一瞬で入れ替わるスリリングな展開は、一瞬たりとも目を離すことができない!【ストーリー】1953年、スターリン政権下のソ連で、子供たちの変死体が次々と発見される。 [紹介元] チャイルド44 森に消えた子供たち映画と。 […]

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)