ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~

キング・オブ・ソウルの極上エンターテイメント・ムービー

JBサブ1Sこのところ、ジミ・ヘンドリックスやスライ・ストーンなど黒人ミュージシャンの映画が立て続けに公開されているが、極めつけはやはりJB、ジェームス・ブラウンのこの映画であろう。ゲロッパの愉快なおっさんくらいに思っている人が日本には多いかもしれないが、マイケル・ジャクソンやプリンス、果てはヒップホップにまで影響を与えた音楽やダンスのみならず、公民権運動の時代に生きた黒人スターであるモハメド・アリやマイルス・デイヴィスなどと共に当時の政治や文化に与えた影響力をも考えた時に、JB以上の大物は数える程しかいない。その伝説的人物の、貧しく家族の愛情にも恵まれなかった少年時代から苦労して大スターに上り詰めた人生の大部分を網羅した伝記映画である。

この映画の素晴らしさは2つある。
1つは、JBをことさら美化せずありのままを伝えている事。JBは周囲の人には敬意を持って接する反面、親友のボビー・バードを含め身内に厳しく、自ら率いたバンドへの締め付けはさながら軍隊の規律を思わせるものであった事は有名だし、たびたび問題を起こし警察のやっかいにもなっているちょっと度が過ぎた人物である事も隠されていない。しかし、そんな問題の多いJBがステージに上がれば強烈な求心力を発揮し、観客は熱狂せずにはいられない。音楽だけでなくビジネスでも女性問題でも数多くあったトラブルにも決して屈する事のない、溢れるパワーと意志の強さがスクリーンを通して伝わる。JBがどういう男であったか、一発で理解出来る映画になっている。

もう1つの素晴らしさは、圧巻のパフォーマンスと音楽。主役のチャドウィック・ボーズマンは顔はあまりJBに似ているとは言えないが、JBのコンサートの熱気を伝える事に成功している。JBの得意なダンスのマッシュポテトや股割りをやっているのを見ていたら、ついついニヤリとしてしまう。筆者は東京に上京してからは、JBの来日ライブには必ず足を運び生で聴いて、JBの音楽は音楽が理想とする極北に位置するものだと強く感じた。16ビートを刻んで一糸乱れぬリズムと、いきなり曲が転調する時にも完璧にキマるホーンをバックに、縦横無尽にJBが叫び、踊り狂う。あの高揚感をどう言葉で説明してもしきれるものではない。その感動をこの映画は思い出させてくれた。

ジェームス・ブラウンといえば、映画ファンには、『ロッキー4/炎の友情』での「リヴィング・イン・アメリカ」の歌唱や『ブルース・ブラザース』のジェームズ牧師役も懐かしいだろう。しかも今回『ブルース・ブラザース』で共演したダン・エイクロイドがJBのマネージャー役で出演しているのも嬉しい。映画ファン、音楽ファンにはぜひ観て欲しいと思うし、この映画が不世出の大スターJBの再評価に繋がればと思う。

▼作品情報▼
製作:ミック・ジャガー、ブライアン・グレイザー
監督:テイト・テイラー
出演:チャドウィック・ボーズマン、ネルサン・エリス、ダン・エイクロイド、ヴィオラ・デイヴィス、オクタヴィア・スペンサー、ティカ・サンプター、ジル・スコット
配給:シンカ/パルコ
公式サイト:http://jamesbrown-movie.jp/
(C)Universal Pictures(C)D Stevens
2015年5月30日シネクイントほか全国公開

 

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