【FILMeX】さよなら歌舞伎町：舞台挨拶 ： 映画と。

（左から）南果歩、前田敦子、廣木隆一監督

現在開催中の第15回東京フィルメックスで特別招待作品『さよなら歌舞伎町』が、11月23日にジャパン・プレミアとして有楽町朝日ホールで上映され、ヒロイン沙耶役の前田敦子が共演の南果歩、廣木隆一監督とともに上映前の舞台挨拶に登壇した。最初に黒のドレス姿の前田が登場すると、男性ファンから「あっちゃーん！」と声もかかり、前田も明るい笑顔を見せた。

本作は新宿・歌舞伎町のラブホテルを舞台に、ラブホテルの店長（染谷将太）と同棲中の恋人・沙耶（前田）を中心として、そこに出入りする人々のとある一日を描く群像劇だ。舞台がラブホというだけあり、一部俳優陣が披露する肉弾戦も特筆ものだが（特に韓国人女優イ・ウンウの存在感は出色！）、決して人生の勝ち組ではない人々がラブホという密室空間で繰り広げる悲喜こもごもを優しく見つめた作品だ。

　本作は前田にとって初の群像劇となったが、彼女は「群像劇は好き」とのことで、「いろいろな人の視点が楽しいし、他の俳優さんがどんな演技をされているのかを考えるのは刺激的でした」と語る。そのなかでも共演シーンの多い恋人役・染谷将太の醸し出す、ナチュラルな空気感には助けられたことも話してくれた。

廣木監督はこれまでも『ヴァイブレータ』『やわらかい生活』など、さまざまな愛のかたちを描くことに長けているが、出演のオファーを受けた前田は、「廣木監督作品の出演は初めてでしたが、（廣木監督の）お名前を聞いただけで『お願いします！』と答えました」と即決したことを明かす。監督については「自分で考えることの厳しさを教えて下さいました」と感謝を述べた。また、沙耶はミュージシャン志望という設定だったのでギターの弾き語りを披露しているが、「撮影1ヶ月前の衣装合わせのときに、歌ってもらうからと言われたんですが･･･。これまでギターを握ったこともなかったので1ヶ月みっちり練習して撮影に入りました」と苦労を明かした。その成果には「うーん･･･。どうでしょう･･･？」とやや不安げに廣木監督を見つめた前田だったが、監督からは「よく頑張ってくれたよ」とねぎらいの言葉をかけられた。

　南も廣木監督作品への出演は初めてだったが、現場について「濃厚な時間だった」と振り返り、「この映画には様々な人々、エピソードが出てきますが、廣木監督はどんな人間でも人生の主人公だと捉えて下さいました」とこちらも感謝の弁。南の役どころはラブホ従業員ということで、撮影前に何と「町田のホテルで実際に掃除の訓練をした」という。「手足を使うという掃除のテクニックを教えていただいて、それを映画でも披露しているのでぜひ見て下さい！」とアピールし、観客を笑わせた。また南が自転車で疾走するシーンで廣木監督が併走したけれど途中でついてこれなくなったという撮影中のエピソードを語り、「もう絶対に、これからも廣木隆一について行こう！と決めた」と、とにかく信頼の弁。だが廣木監督は「そっち（南）は自転車だからね、俺は走ってたんだから！」とツッコミを入れるチームワークの良さを見せた。

　そんな前田と南のキャスティングの理由を廣木監督は、「理由なんて特にないよ」とコメント。ただ「（前田も南も）いいところなんてない役なので（笑）、それでも二人に出てもらえるというだけでありがたかった」とこちらもまた感謝の弁。

本作の舞台となった歌舞伎町について廣木監督は、「（自分は）ピンク映画から始まったので、新宿は青春であり、仕事場でした。ただ変わったところと変わっていないところがあると感じていたので、それが映画に出ているといいと思う」と歌舞伎町への思い入れを述べる。また前田は「プライベートではあまり行かないけれど、みんなが自由でいられる場所なのかな･･･。いるだけでも不思議な気持ちになる場所でした」と語ってくれた。

「エンドロールの最後の最後まで（席を立たずに）見届けてほしい」と廣木監督が言うように、それぞれの登場人物の今後に思いを馳せたくなるような作品だ。とても華やいだ舞台挨拶となったが、三人がちょくちょく顔を寄せ合って笑ったり、発言のフォロー（ツッコミ？）を入れたり、互いに感謝の気持ちを持ち合わせていたことも印象的で、作品同様に温かな気持ちに浸れたひとときだった。

▼作品情報▼
監督：廣木隆一
脚本：荒井晴彦、中野太
出演：染谷将太、前田敦子、イ・ウンウ、大森南朋、松重豊、南果歩
音楽：つじあやの（スピードスターレコーズ）
主題歌：「Believe in love」meg with SWEEP（Gambit Entertainment）
配給・宣伝：東京テアトル
年齢制限：R15＋
（C）2014『さよなら歌舞伎町』製作委員会
2015年1月24日（土）より劇場公開

▼第15回東京フィルメックス▼
期間：2014年11月22日（土）〜11月30日（日）
場所：有楽町朝日ホール・TOHOシネマズ日劇
公式サイト：http://filmex.net/2014/