【TIFF】シーズ・ファニー・ザット・ウェイ:Q&A
『マイ・ファニー・レディ』のタイトルで2015年12月19日(土)よりヒューマントラスト有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA ほかにて全国公開!
第27回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門出品作、コールガールからハリウッドスターとなった女性(イモージェン・プーツ)と、その成功のきっかけを与えた舞台演出家(オーウェン・ウィルソン)の出会いを描いた『シーズ・ファニー・ザット・ウェイ』が好評だったが、10月29日、本作のピーター・ボグダノヴィッチ監督と主演のオーウェン・ウィルソンが上映後のQ&Aに揃って登壇した。ボグダノヴィッチ監督の来日は前々からアナウンスされていたが、オーウェンの来日は急遽決定したもの。直前にオーウェン来日のニュースが飛び込んできたので、観客のなかには知らなかった人もいたのか、驚きの歓声もあがった。
ボグダノヴィッチ監督と言えば、『ラスト・ショー』(71)、『ペーパームーン』(73)などの名作を世に送り出した名匠だ。さぞ近寄りがたい威圧感があるのかと思いきや、登場した監督はとてもキュート。観客からの「映画のマジックはどうかけているのか?」との問いにも「Thank you very much」と述べつつも「I don’t know」と落とすお茶目さ。ただしその後は真面目に「良い俳優をキャスティングでき、彼らのベストの演技を引き出せば、監督もベストの演出ができたことになるので、監督と俳優、お互いの関係性から生まれるものだと思います」と回答。本作ではオーウェンを主役に迎えられたことが嬉しかったようで、「私はオーウェンのファンだったので、彼が出演を承諾してくれたときからこの映画は成功すると思っていました」と振り返った。
対するオーウェンも「ニューヨークが舞台の映画を、実際にニューヨークで撮影できることが素晴らしくて、ボグダノヴィッチ監督との仕事は自分の人生のなかで一番楽しい仕事でした」と感慨深げ。実はこの二人、『クランド・ブダペスト・ホテル』(13)などのウェス・アンダーソン監督を通じて知り合ったというのだが、「今回の仕事を通して、より絆が深まったと思う」と監督への信頼のほどを窺わせた。
作品のアイディアについて、ボグダノヴィッチ監督は「1978年にシンガポールで映画を撮りましたが、それはシンガポールで娼館を開こうとしたアメリカ人の話でした(『Saint Jack』(79/未公開))。そこで実際のコールガールと会いましたが、彼女たちは故郷(主にタイ)に帰りたいと訴えていました。そこで私は映画のお金を少しあげて、今の仕事をやめて故郷へ帰りなさいと勧めたのですが、ここから着想を得ました」と語る。「映画監督や舞台演出家がそんなコールガールたちを自分の作品にキャスティングしたらどうなるんだろう・・・というクレージーなアイディアだったんだけど」と監督が言えば、聞いていたオーウェンが「本当にクレージーだよね」と笑う一幕が。役作りについては「本当にカオスな状態ではドラマチックな緊張が生まれると思うけれど、ドラマチックさよりもコメディ的な緊張を出すように心がけたんです」と答えてくれた。
本作のラストで某大物監督が登場するのだが(※今後の劇場公開を願う意味も込めて、実名は伏せます)、「とにかく有名人を起用したかった。そこでみんなが顔を見てすぐに分かるのが“彼”だと考えたんです。彼とは長年の友人なので出演依頼の電話をかけたら、快諾してくれたんです」と、ボグダノヴィッチ監督とその人物との意外な繋がりも披露してくれた。
短い時間でのQ&Aではあったが、会場は何とも言われぬ幸福感に包まれていた。楽しい映画を見て、ゲストと時間を共有できることは映画祭ならではの醍醐味であり、何よりも代え難い体験だ。ボグダノヴィッチ監督は多作な監督ではないが、今回を機に彼の作品を見直してみようとも思った。また忙しい合間を縫って初来日を果たしてくれたオーウェンにも感謝。正直なところ、映画で見るよりも実物のほうが男前であったことに驚いた。本作は現時点では劇場公開が未定だが、ぜひ公開が決定した暁には二人揃って再来日されることを期待したい。心の底から劇場公開を求む!!!!
(文:富田優子/写真:鈴木こより)
▼作品情報▼
監督/脚本 :ピーター・ボグダノヴィッチ
脚本/プロデューサー:ルイーズ・ストラットン
プロデューサー:ノア・バームバック、ウェス・アンダーソン、ジョージ・ドレイコリアス
出演:オーウェン・ウィルソン、キャスリン・ハーン、イモージェン・プーツ、ジェニファー・アニストン、ウィル・フォーテ、リス・エヴァンス
93分 英語 Color | 2014年 アメリカ |
【第27回東京国際映画祭】
開催期間:2014年10月23日(木)〜10月31日(金)の9日間
会場:六本木ヒルズ、TOHOシネマズ日本橋、歌舞伎座
公式サイト: http://www.tiff-jp.net