『レクイエム 最後の銃弾』『ファイアー・レスキュー』
民主派による大規模デモの動向が高い関心を集めている香港。映画館にも今、香港映画の熱い風が吹いている。
『レクイエム 最後の銃弾』、『ファイアー・レスキュー』の“ザ・漢(おとこ)映画”2本が現在公開中だ。友情、裏切り、火花散るアクションに、ツッコミどころ満載でも力技で押しまくるストーリー展開は往年の香港映画好きにはたまらない。
『レクイエム 最後の銃弾』は、麻薬捜査に命をかける男たちを描いたポリスアクション。強い絆で結ばれた3人の警官を、ラウ・チンワン、ルイス・クー、ニック・チョンが演じている。この3人、とにかくキャラも顔も濃い。こんな濃い3人が幼馴染みで、かつ同じ警官になっているという設定がそもそもかなり強引なのだが、そこはさらっと流してほしい。敵はタイの大物麻薬王。3人はタイに乗り込むが、そこで展開される大掛かりな銃撃シーンの迫力は見どころの一つ。一気に手に汗握り、その意外な結果に呆然となったところで、まだ映画は折り返し地点。香港、タイ、マカオを股にかけて展開するドラマのクライマックスにはもちろん、更に“タメ”たっぷり、兄弟愛たっぷりのアクションが用意されている。 『ファイアー・レスキュー』もまた、消防士たちの友情、裏切り、生死をかけた戦いという、香港ノワールのエッセンスをそのまま消防署に持ち込んだ男気ドラマだ。クリスマス・イブに発電所で発生した大火災から人々を救うべく、炎と煙に立ち向かう男たちを描く。煙がまるで不気味な未知の生物のように、人々の命を奪い取っていく描写が怖い。
本作でも、俳優たちの“いい顔”が大きな見どころ。「香港映画なんてオジサンが観るもの」と先入観を持つ女子がいたら、とりあえず映画館に走っていただきたい。主演のニコラス・ツェー、ショーン・ユーという問答無用の美男子から、ベテランのサイモン・ヤムに、『レッドクリフ』の趙雲役で三国志ファンに実写で「長坂の戦い」を堪能させてくれた大陸の俳優フー・ジュンまで、キレイ系、味わい系、無骨系とあらゆるタイプのイケメンが揃っている。煙りまみれ&防火服姿なのでクリアにその御姿を堪能できないのは残念だが、だからこそDVDではなくスクリーンで観てほしい。
「消防士の世界ってこんなにハードボイルドなのか!」と胸が震える。『レクイエム~』にも言えることだが、女性の扱いがお飾り程度にもなっていない潔さも高ポイント。あくまで漢(おとこ)の映画である。
1997年の香港返還以降、中国本土を意識した映画作りが進められ、往年の輝きを失っていた香港映画界。近年再びローカルな作品作りに意識を向けてきたことを感じさせる2本だ。「香港人であること」への想いを新たにした人々のニュースを頭の隅に置きながら、この時期にこそ見てほしい。
▼作品情報▼
『レクイエム 最後の銃弾』
原題:掃毒
監督:ベニー・チャン
出演:ラウ・チンワン、ルイス・クー、ニック・チョン、ロー・ホイパン
提供:カルチュア・パブリッシャーズ 配給・宣伝:フリーマン・オフィス
2013年/中国=香港/シネマスコープ/134分 映倫R15+
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全国順次公開中!
『ファイアー・レスキュー』
原題:救火英雄
監督:デレク・クォック
出演:ニコラス・ツェー、ショーン・ユー、サイモン・ヤム、ジャッキー・チェン(友情出演)
提供:カルチュア・パブリッシャーズ 配給・宣伝:フリーマン・オフィス
2013年/中国=香港/116分
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シネマート六本木、シネマート新宿にて公開中
10月25日(土)よりシネマート心斎橋ほかにて全国順次公開