her/世界でひとつの彼女

映画と。ライターによるクロスレビューです。

HERmain監督・脚本:スパイク・ジョーンズ
出演:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド、スカーレット・ヨハンソン
音楽:アーケイド・ファイア、オーウェン・パレット
主題歌:カレンO 「The Moon Song」
【作品解説】
本年度アカデミー賞・脚本賞受賞&5部門ノミネート!ありえないはずの“一人とひとつ”の恋は、奇跡の展開へ—!映画で感じたことないほどの愛しさと切なさ。観たことないラブストーリー。

奇才スパイク・ジョーンズ監督(『かいじゅうたちのいるところ』)の4年ぶりとなる最新作は、ホアキン・フェニックス(『ザ・マスター』)、エイミー・アダムス(『アメリカン・ハッスル』)、ルーニー・マーラ(『ドラゴン・タトゥーの女』)、スカーレット・ヨハンソン(『アベンジャーズ』)ほか豪華かつ実力派のキャストが集結。近未来のロサンゼルスを舞台に、人工知能型OSに恋心を抱いた男を描いたSFラブストーリー。ジョーンズ監督が長編では初めて単独で脚本も手がけ、第86回アカデミー賞で脚本賞を受賞。

(物語)近未来のロサンゼルス。セオドア(ホアキン・フェニックス)は、他人の代わりに想いを伝える手紙を書く“代筆ライター”。長年一緒に暮らした妻キャサリン(ルーニー・マーラ)と別れ傷心の彼はある日、人工知能型OSの“サマンサ”(スカーレット・ヨハンソン)に出会う。出会うといっても実体をもたない彼女は、コンピューターや携帯画面の奥から発せられる“声”でしかない。けれど“彼女”は、驚くほど個性的で、繊細で、セクシーで、クレバー。次第にセオドアは“彼女”と一緒に過ごす時間を誰といるより幸せに感じるようになり、”彼女“に魅了されていく。


【クロスレビュー】

近未来の世界を舞台にイケてない男とAI型OSの女の恋物語。スカヨハのセクシーボイスで体温が上がり、実際に彼女が側にいるような錯覚に陥るのは主人公だけではなく、我々観る側も同様だ。彼女は完璧に自分を理解してくれる!と舞い上がり、男にとってかけがえのない存在になる。だがいかんせん彼女には実体がなく、彼女に触れたくとも“セックスもどき”が関の山。この関係を虚しいと感じるか、肉体関係を超えた崇高な愛と捉えるかにより、観客の好みが分かれそうだ。だが筆者としては、この愛の結末が想定内で、もっと斬新さが欲しかったというのが正直なところ。設定がユニークで、透明な空気感やキャストが好みなだけに勿体ない!
(富田優子/★★★☆☆)

iPhoneのSiriのように声だけでメールを送ったり音楽を選べる世界はもう到来しているし、人工知能型OSが自分に適した人格を持って接してくれるとしたら、きっと仲良くなれるはずなのだ(だってスマホやPCは最もパーソナルな情報が詰まっているから)。しかも「サマンサ」の声は超セクシーだし言葉も思慮深いし自分を思いやってくれるし、胸ポケットに端末を入れてどこへでも一緒に行けるし、もう面倒くさい人間なんていらん!と思いたくなるのもわかる(端末の重みでポケットが破れちゃうので下のところを安全ピンでとめてるセオドアがかわいい)。でも「都合のいい恋人」と安心してるとしっぺ返しを食らうのはリアルの世界と同じなわけで……。「恋は社会的に受容された狂気」。相手が二次元だろうが空気人形だろうがOSだろうが人は恋に落ちるモノだ。例え声しか聞けなくても、会ったこともない文通相手にも。本作の舞台は近未来だけど、手紙やカードをしたためる文化が残ってて、代筆屋っていう職業を登場させてるのも意味深い。どんな時代でもどんな手段でも、思いを伝えるって大事で、きっとそこから始まるのだ。S・ジョーンズ監督の着想とセンスに脱帽。
(外山香織/★★★★★)


HERsub2013年/アメリカ/カラー/126分
原題:her
配給:アスミック・エース
公式サイト:http://her.asmik-ace.co.jp/
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures
6月28日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー!

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