大脱出
『エクスペンダブルズ』シリーズで助走的な競演を果たした後の、本格的なアクション2大スター競演となった『大脱出』。老いてなおますます盛んな2人を同じスクリーンで見られる喜びを存分に感じて欲しい。
身分を偽り入獄し、そこから脱獄する事で監獄の構造の弱点を指摘し報酬を得るコンサルタント、レイ・ブレスリン(スタローン)。ある日CIAから民間運営の極秘刑務所の脱獄依頼を受け、承諾したブレスリンだったが、騙されて「墓場」と呼ばれるブレスリン自身の考案が反映されたハイテク監獄に閉じ込められてしまう。CIAの依頼と全く違う内容に危険な陰謀の臭いを嗅ぎ取ったブレスリンは、監獄で声をかけてきた囚人達のボス、エミル・ロットマイヤー(シュワルツェネッガー)に協力を依頼し、脱獄を試みるが・・・。
他分野の話で恐縮だが、この大物競演を見た後、スタローンとシュワルツェネッガーの関係はまるでプロレスラーの長州力と藤波辰爾の様だなと感じた。お互いを終生のライバルと認め合う長州と藤波のパワーとスピードを前面に出した闘いは名勝負数え歌と呼ばれ1980年代に一世を風靡し、女性や子供までもプロレスの虜にした。その2人も今や還暦。友人となり、共同でプロレスの興行を打ち今でも現役で闘っており、3年前には13年5か月振りとなるシングルマッチでの闘いを見せてくれた。同じく、スタローンとシュワルツェネッガーも肉体を極限まで鍛え上げたアクションスターとして同時期に活躍し競い合った終生のライバルであり、年齢を重ねた今では良き友人という点が非常に似ている。
長州×藤波もスタローン×シュワルツェネッガーも、還暦を過ぎ身体の動きは全盛期の様にいかない事は、本人達自身が感じているはずと思う。それでも彼らは闘う事演じる事をやめない。そして、それを望むファンが多数いる。考えてみて、現在のプロレス界・映画界に彼らほど多くの人に愛され知られているスターが他に存在するか?と聞かれれば、ここまでのビッグネームはいないと言って過言ではないと思う。筆者も彼らを見る時には、30年以上に渡る活躍を追いかけてきて今もそこにいるという特別の思いがあり、若手にはない深い味わいを感じてしまうのである。それだけでいいのである。この映画に関しても、お世辞でも傑作だの大作だのと言うつもりはない。でも、そんな事は筆者にとってはもうどうでもいい事なのである。昔の名前で出ていますだけじゃない、還暦過ぎの男の底力ここにあり!という事を感じていただければと思う。
プロレスで、試合の序盤に両腕をガッチリ組み合う事を「ロックアップ」という(スタローンの主演作に同名の映画があり、しかも今作と同じ監獄の映画)。またスタローンとシュワルツェネッガーが映画でロックアップする姿なら何度でも観たい。若い時に競演する事がなかった2人のこれからの名勝負数え歌を観たい。そんな事を思った今回の映画だった。
▼作品情報▼
監督:ミカエル・ハフストローム
出演:シルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ジム・カヴィーゼル、エイミー・ライアン、ヴィニー・ジョーンズ、サム・ニール、カーティス・”50セント”・ジャクソン
2014年1月10日(金)よりTOHOシネマズ日劇他ロードショー
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