『パリ猫ディノの夜』空中散歩を堪能!薫り高いアニメ・ノワール

 スクリーンに映し出される世界にすっかり心奪われてしまった。猫と一緒に夜のパリを空中散歩できるなんて! エッフェル塔やノートルダム寺院を猫目線で堪能できる本作、ワクワクするのは子供だけではないだろう。クセのあるタッチやレトロ調の色彩、影絵のようなコントラストが醸しだすオールド・スタイルも味わい深く、心(こころ)和ませてくれる。何度も見たくなる、薫り高いアニメーションだ。


 オス猫のディノと少女ゾエの揺るがない絆を描いたこの物語は、心に温かい余韻を残す。ただ、その展開は意外にもスリリングだ。父親を失ったショックで失語症になっていたゾエにとって、飼い猫のディノだけが唯一の友達。引きこもりがちな生活を送る彼女だが、“ある秘密”を知ってしまったことで大騒動に巻き込まれてしまう。実はディノには、ゾエの他にも別の主人がいたのだ。夜になるとスーッと窓から出ていくディノの行動に疑問を感じたゾエ。ある日、その跡をつけてみるのだが、途中、ギャングの秘密を目撃してしまう。しかも彼らは、ゾエの父親を殺したギャングだった。姿を見られてしまったゾエは、必死に彼らから逃れようとするが・・・。

 昼と夜で別の顔をもつ猫のディノをはじめ、登場キャラクターが多面的に描かれているのも本作の魅力だろう。サスペンスとはいえ、彼らの正体や本性が明かされていく描写は独特のユーモアを含んでいて楽しい。そして何よりも、飼い猫が主人を守ってくれようとするシチュエーションがロマンティック!
このユニークな世界に誘ってくれる本作は、世界中の映画祭で絶賛され、2012年アカデミー賞アニメーション部門にもノミネートされた。ディズニーやジブリが生みだす世界とはまったく違う、注目すべき大人仕様のアニメーションである。

2013年7月13日(土)より 新宿ピカデリーにてロードショー

『パリ猫ディノの夜』
監督:アラン・ガニョル、ジャン=ルー・フェリシオリ
脚本:アラン・ガニョル
美術監督/グラフィックデザイン:ジャン=ルー・フェリシオリ
音楽:セルジュ・ベセ
声の出演:ベルナデット・ラフォン(クロディーヌ)、ドミニク・ブラン(ジャンヌ)、ブルーノ・サロモネ(ニコ)、ジャン・ベンギーギ(ヴィクトル・コスタ)ほか
製作:2010年/フランス/70分
配給:巴里映画
日本語字幕/フィルム上映
(C)Folimage Lunanime Digit Anima

公式サイト:http://www.parinekodino.com/