【TNLF】『チャイルドコール 呼声』:ポール・シュレットアウネ監督トークショー
ジャパンプレミア上映記念
2013年02月11日(月)
2013年2月9日16時30分より、『チャイルドコール 呼声』がジャパンプレミア上映され、その後、ポール・シュレットアウネ監督のトークショーが開催された。トーキョーノーザンライツフェスティバル3回目にして初めての海外からのゲストに、超満員の会場は大いに盛り上がった。その様子をお伝えします。
父親の暴力から逃れ身を隠すため、アパートに引っ越してきたアンナと息子のアンダース。それでも不安な彼女は、チャイルド・コール(監視用音声モニター)を購入、息子の寝室に据え置く。ある晩、チャイルド・コールから聴こえてきた突然の子供の悲鳴に起こされるのだが、息子は何事もなく眠っていた。購入した電気屋に相談に行き、混線により他の部屋の音が聴こえることがあるのを知った彼女は、他の部屋で子供の殺人があったと疑うのだった…。
主演はノオミ・ラパス。『ミレニアム三部作』の世界的大ヒットによりハリウッドで引っ張りだこの彼女。本作では、強い女のイメージとはかけ離れた、繊細で壊れやすい心を持った母親役で、その別人ぶりも注目のひとつだ。
それと、この作品の魅力は、人の心の奥の世界をまるで現実のことのように体験できるところ。私たちは、主人公たちの心の奥の世界を観ているとは知らないまま、現実としてその世界を見、彼らが感じている恐怖や謎をそのまま受け止めることになる。何が現実でどれが非現実か、今回の監督のトークショーでは、そのヒントが語られている。
司会者:監督は今回が3度目の来日で、1995年デビュー作『ジャンンク・メール』が東京国際映画祭で紹介された時以来ということだそうです。15年ぶりの渋谷の印象はどうでしょうか。
「前よりももっと人が増えたような印象があるのですが、私自身日本が大好きですので、またここに来ることができてとても幸せに思っています」
司会者:母親と子供の愛情がこの映画の軸になっているのですが、監督にも娘さんがいらっしゃるとお聞きしたのですが、監督の親としての感情というのもこの映画に影響しているのでしょうか
「やっと子供ができて自分自身大変変わったと感じております。子供を持つことによって色々と新しい体験もできました。子供に対する限りない愛情というものには、限界がないのですが、それはいいことでもあるのですが、同時に心の中の深いところで、不安を覚えたりだとか、恐れてしまう、そうした怖い感情というのも私自身体験していますので、それがこの映画の中に反映されているかと思います」
司会者:監督は大変寡作ですね。この作品は2005年『ネクストドア隣人』以来ということになります。じっくり作品を選ばれて、今回こうした題材を取り上げられたと思うのですが、そのきっかけは何でしょうか
「何年か前に、チャイルド・コール、安くてあまり質の良くない製品が、実際に混戦してしまい、それによって児童虐待が発覚したという記事を読んだことが、この映画の出発点です」
会場からの質問:『ネクストドア隣人』に続いて2作品続いてサイコ・スリラーを撮られたわれですが、監督がそれに魅せられる理由を教えてください。それともう一点、サイコ・スリラーを作る上で参考にする作品もしくは、影響を受けた監督がいましたら教えてください。
「『ジャンク・メール』と2作目の『アマチュア』という作品はブラック・ユーモアというジャンルにカテゴライズされるかと思います。2作品作ってみてこのジャンルには飽きてしまったというか、もっと自分自身の世界観を広げたいという風に考えました。そして世界を主観的、客観的、色々な角度で心理的に探っていくといった手法の映画を作りたいと思い、スリラーというジャンルを選んだということです。影響を受けた監督ですが、昔のポランスキーですね。あとヒッチコックが私は大好きです」
会場からの質問:監督から私たちはある種のナゾナゾを投げかけられて、試されているような気がします。監督はナゾナゾを先に考えるのか、それとも答えを考えてから映画を作っていこうとしているのか教えてください
「私自身は、質問が先か答えが先か、どちらかということは、あまり意識していません。とても抽象的なイメージとかシーンを色々と散りばめることによって、現実と夢の世界というのが揺らぐような感覚というものをこの映画の中では描きたいと思っていました。また、夢または私的なポエムのような要素、そしてエコーの使用、さまざまな連想、そういった要素がこの映画の中には散りばめられています。この現実と非現実の揺らぎというのが観る者を幻惑させていて、もしかしたらこれは、映画全体が電気店の店員であるヘルゲの夢だったのかもしれないとも解釈できるくらいわからない世界かとは思います。実際のところ観客の皆さんの反応としては、あまりにもこの映画が謎に満ちているということでイライラする方もいらっしゃるようですが、けれども色々な解釈をすることが可能だと思いますし、それは皆さんの自由なのです」
司会者:最後に日本の映画ファンの皆さんにメッセージをお願いします
「とりあえず自分の子供を愛してあげてください」
▼『チャイルドコール 呼声』作品情報
英題:Babycall
監督:ポール・シュレットアウネ
出演:ノオミ・ラパス、クリストファー・ヨーネル
制作:2011年/ノルウェー/ドイツ/スウェーデン/ノルウェー語/96分
受賞: 2012年ノルウェーアカデミー(アマンダ)賞、、主演女優賞、脚本賞ほか、4冠
提供:キング・レコード
配給:ミモザフィルムズ、スティクティングタマゴトーキョー
3月30日よりヒューマントラストシネマ渋谷にてロードショー
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