『王になった男』後光がささんばかりのカリスマ性、イ・ビョンホンの魅力再見

 イ・ビョンホンが韓国映画界を代表するスターであるとは認識していた。しかし、どうもキザでクールな男っぷりを、鍛え上げたボディとともに披露しているナルシスティックな印象ばかりが先行し(ファンの方、ゴメンなさい)、正直“演技派”のイメージは持っていなかった。それが『王になった男』で思いきり覆された。暴君と心優しい影武者という二役を、くっきりと、それでいて流れるような絶妙の切り替えで演じている。
 本国で1,230万人の観客を動員し、韓国映画史上歴代3位の大ヒットを記録した本作。主人公は豊臣秀吉の朝鮮出兵による戦いで活躍し、1608年に朝鮮王朝15代王に即位した光海君(クァンヘグン)だ。暗殺への恐れから暴君と化していった側面と、政治的には優れた手腕を発揮したという相反する側面を持った謎めいた人物像を、“影武者がいた”という設定でフィクションとしてサスペンスフルに描き出す。
 瓜二つの容貌ゆえ、病に倒れた光海の“代役”とされた道化師ハソンは、彼の素性を知る側近のホ・ギュン(リュ・スンリョン)、チョ内官(チャン・グァン)の指示通りに宮廷生活をこなしていく。腐りきった政治家や役人たちと民衆の困窮とのあまりにもかけ離れた姿に心を痛め、次第に王として自ら言葉を発する男に変わっていくが・・・・・・。ハソンの望む政治には、とりたてて特別な何かがあるわけでは決してない。そこにあるのは、民間感覚。官と民の意識の乖離をストレートについた彼の言葉の数々は、国境を越え、普遍性をもって観る者の心に届いてくる。

来日会見のイ・ビョンホン。40代とは思えない艶肌!(撮影=新田理恵)

 愛嬌たっぷりでコミカルな道化のハソン、次第にリーダーの風格を身につけていくハソン、そして残虐性とカリスマ性を併せ持つ光海と、1本の作品でみせるイ・ビョンホンの演技のグラデーションが見事。まさにこの作品をひっぱる“王”の貫禄を見せつける。1月29日に開かれた来日記者会見で、「王と(映画をひっぱる)主演俳優は“責任がある”という点では似ています。でも、民の声に耳を傾け、民が求める事を行う王と違い、俳優はファンの好みに合わせていくと自分を失ってしまう」と語ったイ・ビョンホン。6月に公開される『G.I.ジョー バック2リベンジ』も楽しみだが、これまでの出演作とは一線を画し、新境地を開いた演技派ビョンホンもかなりイケる。すみません、肉体派のナルシストなんて、もう言いません。
 脇役も芸達者ばかり。『トガニ 幼き瞳の告発』(11)の気色悪い校長役から180度方向転換の チャン・グァンや、『サニー 永遠の仲間たち』(11)でヒロインを演じたシム・ウンギョンも次第に王に心を開いていく毒見係の女官サウォルを演じて強い印象を残す。
 実力ある俳優陣をはじめ、時代劇というジャンルを徹底した考証のうえ上質のドラマに仕上げただけでなく、一級のエンターテインメントとして成立させてしまえる韓国映画界の底力を見た。






『王になった男』
監督:チュ・チャンミン(『拝啓、愛しています』)
出演:イ・ビョンホン、リュ・スンリョン、ハン・ヒョジュ、キム・イングォン、チャン・グァン、シム・ウンギョン
配給:CJ Entertainment Japan
2012年/韓国/131分
©2012 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

公式サイトhttp://becameking.jp/
2月16日(土)より新宿バルト9、丸の内ルーブルほか全国にて公開

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  1. soramove

    映画「王になった男」ストーリーは斬新さが無いが、それが良い…

    映画「王になった男」★★★★ イ・ビョンホン、リュ・スンリョン、 ハン・ヒョジュ、キム・イングォン、 シム・ウンギョン出演 チュ・チャンミン監督、 131分、2013年2月16日より全国公開 2012,韓国,CJ Entertainment Japan (原題/原作:MASQUERADE )…