【FILMeX】扉の少女(仮題):Q&A

韓国の新鋭チョン・ジュリ監督、ペ・ドゥナを「私の一番の同志」

※『私の少女』のタイトルで、2015年5月1日よりユーロスペース、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

ペ・ドゥナ

ペ・ドゥナ

11月24日、開催中の第15回東京フィルメックス・コンペティション部門出品作の韓国映画『扉の少女』(仮題)が上映され、主演のペ・ドゥナとチョン・ジュリ監督が来日し、Q&Aに参加した。『リンダ リンダ リンダ』『空気人形』など日本映画の他にもハリウッドにも活躍の場を広げ、韓国を代表する女優となったドゥナだが、その華奢な身体からは大女優というような威圧感はなく、大きな瞳をキラキラ輝かせてかわいらしく「オハヨウゴザイマス」と日本語で挨拶し、一気に観客を魅了した。

扉の少女QA ドゥナは客席からの質問に爆笑する一幕もあり、終始リラックスした様子。「日本やハリウッドの映画に出演し、言語の違いなど大変な点もあるかと思いますが、そのようなときのストレス解消方法は?」というファンの質問に、彼女は「俳優は演技をしながら言葉で伝えなければならないので、(母国語ではない場合は)その作業はストレスでした」としたうえで、「ワインが好きなので、朝に1杯、昼に1杯、夜に1杯飲んだりすることもあります(笑)。でも言葉を使わないこと、たとえばオーケストラの演奏会に行ったりします。音楽は言葉ではなく、体で理解できるものだから」とにこやかに回答。ちなみに本作では韓国映画ということで「母国語での演技はすんなりと役に入ることができました。今は海外で撮影していますが、これらからも韓国映画には出ていきたいですね」と、言語に関してのストレスはなかったと振り返る。

チョン・ジュリ監督

チョン・ジュリ監督

本作は、ドゥナ演じる女性警察官ヨンナムがある理由によりソウルから地方の村に配属となる。その閉鎖的な村で彼女は、継父と祖母から日常的に虐待を受けている少女ドヒ(キム・セロン)と出会い、ドヒを救おうとすることで、逆に彼女が窮地に陥るという物語。家庭内暴力や性的マイノリティに対する偏見などの社会的問題を絡めながら、ヨンナムとドヒの心の軌跡に迫ったドラマと言えよう。ヨンナムが地方転勤になった理由は上司との不倫・・・と勝手に想像していたが、その予想の斜め上を行くものだったり、ドヒが天使にも悪魔にも見えたり・・・と先の読めない展開には唸らされた。チョン・ジュリ監督は本作が長編デビュー作となったが、ヨンナムとドヒのキャラクターについて、「どういう人物設定にすれば寂しい女性二人が出会うことができるかと悩みました。一人は実母はおらず家族から虐待されている少女で、それに向き合うもう一人の女性はどんな人にすれば良いかと考えた結果がヨンナムという、職業的にも性的な面でも複雑なキャラクターでした」と明かす。

ペ・ドゥナ3 ドゥナはこれまで韓国ではポン・ジュノ、日本では山下敦弘、是枝裕和、ハリウッドではウォシャウスキー姉弟など著名な監督に起用されてきたが、本作のように新人監督、女性監督とのタッグはどう考えているのだろうか?「新人の方との仕事は好きです。自分も勉強になるし、一緒に映画をつくろうという意欲が湧きます。女性監督の場合は、女性のキャラクターをつくるうえでとても良いヒントを下さるので演技がしやすいですね」とコメント。さらにチョン監督については「監督とは年齢も近くて、友人、姉妹のようでした」と言えば、チョン監督も「私にとっての一番の心強い同志はドゥナさん。彼女も主演で大変だったのにスタッフや共演者を励ましてくれて、最後までベストを尽くしてくれました」と二人の信頼関係を窺わせた。

ペ・ドゥナ2 そんな撮影現場について、ドゥナは「スタッフの数は(私が出演した)『クラウド アトラス』の5分の1くらいで、まさに少数精鋭という感じでした。でも常に和気藹々として家族のような雰囲気でしたね」と振り返る。さらに共演のキム・セロンについても「彼女には難しいシーンがたくさんありましたが、周囲が彼女の面倒をよく見てくれて気遣っていました。彼女にとっても家族的な雰囲気のなかで撮影が進められたのは良かったと思います」と先輩らしい面も見せた。

本作は日本では来年劇場公開が予定されていることが市山尚三プログラミングディレクターから告げられると、会場から盛大な拍手が起こった。ドゥナもさることながら、『冬の小鳥』『アジョシ』の天才子役セロンの熱演にも注目だ。3年前の『アジョシ』で来日した際には、今後の抱負として「深みのある女優になりたい。きれいな顔を観せるような女優ではなく、観てくれる人がこれは本物の演技だと実感できるような演技をしたい。必要であれば、自分を捨ててでも演じたい」と語っていたセロンだが、その言葉を実践しているような、凄味を見せた演技だった。(参考:「アジョシ」ウォンビン、キム・セロン、イ・ジョンボム監督来日記者会見

さらに、少しでも早く見たいぞ!という方には、27日(木)21:15~にもTOHOシネマズ日劇にて上映があるので、ぜひ足を運んでいただきたい。チョン監督のQ&Aも予定されている。

▼作品情報▼
fc08main英題/原題:A Girl at My Door / DOHEE YA
韓国 / 2014 / 119分
監督:チョン・ジュリ
出演:ペ・ドゥナ、キム・セロン
配給:CJ Entertainment Japan

▼第15回東京フィルメックス▼
期間:2014年11月22日(土)〜11月30日(日)
場所:有楽町朝日ホール・TOHOシネマズ日劇
公式サイト:http://filmex.net/2014/

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)